豊島逸夫の手帖

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国家的「金」保有増に走る中国・ロシア

2019年3月1日

今日は先日読売新聞に寄稿した元原稿です。

■中央銀行のゴールドラッシュ

ロシア中国そして新興国が外貨準備のなかで、金を買い増し、ドル保有を減らしている。                                                                                                 

基軸通貨ドルへの信認が低下しているのだ。トランプばらまき政策のツケは、結局米国債増発により賄われる可能性が強い。米国債格下げのシナリオも語られる。そこで、ロシアや新興国が、ドルを見切り、金を買っている。

更に、中国は3兆ドルを超すダントツの世界最大外貨準備保有国だ。

その大半が、対米貿易で稼いだドルである。その結果、中国は米国債の最大保有国となってしまった。そこで、中国人民銀行は金準備を増強させている。

なお、米国債は米中貿易戦争で中国の「武器」にもなっている。中国が米国債をNY市場で売れば、ドル金利は急騰し、マーケットは大混乱に陥るからだ。

■日本の金保有が少ないワケ

中国側の視点にたてば、金は発行国がない「無国籍通貨」ゆえナショナリズムの匂いがしないので、外貨準備として保有するには好都合だ。大統領の言動で発行国通貨の信認が揺らぐこともない。ユーロ危機のときには、欧州国債が売られるなかで、国際金価格が史上最高値をつけた事例もある。

そもそも金本位制は過去の遺物となったが、各国は表のごとく大量の金を外貨準備として保有している。米国は「金廃貨(金は通貨にあらず)」を標ぼうしているのに、外貨準備として8000トン以上の金を依然保有している。対照的に、外貨準備における金の割合が異常に低い国が日本だ。米国債保有を減らし、「金買い」に走ることを、外交上の配慮から控えてきた。現大統領トランプ氏は「ドル安」を好むが、米国債を売られても困る。米国に遠慮することなく、金で資産防衛できるのが、個人投資家となろうか。

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以上

そして今日の写真は早くも白アスパラ。そして鹿肉の赤ワイン煮@自由が丘マガーリ。

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2019年