豊島逸夫の手帖

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好調雇用統計、トランプ氏のジレンマ

2019年7月8日


先週金曜日に発表された6月米雇用統計の非農業部門新規雇用者数22万4千人増はかなりのサプライズであった。事前予測は16万人前後。更に米債券市場の「ささやき」事前予測では13万人程度と見られていた。「16万人でも甘い。実態は13万人程度であろう。」とトレーダーのチャットでは囁かれていたのだ。とにかく、どの程度雇用統計が悪化すれば7月の利下げ幅が0.25%から0.5%になるか、専ら議論のテーマであった。雇用統計発表までの過程でISMをはじめ、地区連銀製造業指数など、かなりの悪化が相次いでいたからだ。それゆえ低めの雇用統計を見込んでいた多くのトレーダーたちはバツが悪い表情を隠せない。


トランプ氏も複雑な思いであろう。
「雇用」は政権のメインテーマだ。
大幅に増加したとなれば、それ見たことかと自慢げなツイートが流れても不思議はない。
しかし今回に限ってはトランプツイートの反応が音無しの構えだ。
市場が7月FOMC利下げ期待で盛り上がっている時に、雇用統計が望外の良い数字を示せば、トランプ氏が渇望する利下げが正当化されなくなる可能性があるからと筆者は深読みしている。
雇用増と利下げは両立が難しい。
「FRBが利上げなどという理不尽な行動をしなければ、新規雇用者数は30万人を超えていたはず。」などとトランプ氏なら呟きかねないが。


雇用統計発表を挟んで利下げ観測が後退するやNY金は1410ドル台から1380ドル台まで急落したが、その後1400ドル台を回復している。雇用統計以外の米経済指標は依然悪化しているので今月末のFOMCで利下げとの見方が根強い。

2019年