豊島逸夫の手帖

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米中部分合意、歓迎宴の後、詳細は「継続協議」

2019年10月15日

11日に米中部分合意を歓迎して318ドル急騰したNY株価だが、週明け14日は先走りとの反省感が市場を支配した。

まず今回は「交渉3段階の1段階」。これまでの交渉で歩み寄ってきた部分を集め合意内容として、これから副閣僚級・閣僚級の交渉で文書化される。合意寸前まで漕ぎつけたが、共産党の反対で米国側作成の合意文書が土壇場で反故になった前例の記憶が市場には鮮明に残る。11月にチリで開催されるAPECの場で両国首脳が部分合意文書に署名して、両国内向けに成果として誇示する目論見も実現は危うい。

米国側は10月15日発動予定であった追加関税は撤回の姿勢だが、12月15日発動予定の消費財含む追加関税は切り札として温存した。

合意内容の検証については、ムニューチン財務長官が「両国にかなりの規模の紛争仲裁機関を創設。」と述べている。しかし中国側は内政干渉として拒否反応を示しそうだ。「仏作って魂いれず」のリスクが残る。

米中で今回の部分合意に関する反応の違いも鮮明だ。

中国側からは総じて「進捗を歓迎」と抑えた表現が目立つ。大統領選挙視野に焦るトランプ陣営に対し、「待ち」の姿勢で臨む交渉戦略は変わらないようだ。共産党強硬派から弱腰の誹りを受けぬための配慮も透ける。

一方、トランプ大統領も400~500億ドル相当の米農産物購入を「直ちに」と2回連呼して迫っている。ツイートのトーンも合意前に「とても暖かな雰囲気」から、かなりトーンダウンした牽制的内容に変わってきた。

知的財産権保護問題や中国市場開放という構造問題の中では相対的に部分的妥協が可能な項目についても、いざ各論の詳細となると具体性が見えない。

とは言え、米中通商摩擦のエスカレートという最悪の事態は回避できた。

市場はそもそも高望みはしていない。10月15日発動予定の追加関税撤回だけでも御の字という評価だ。

今後のワイルドカードとしては香港問題が要注意だ。

米3連休明けの米国議会本会議で「香港人権・民主主義法案」が全会一致で可決される見通しである。香港は中国の一部であるが、中国とは分離された法的、経済的制度を有することを認める。拘束や弾圧の責任者の米国入国禁止などの制裁を課すなどの決定が中国側の強い反発を招くは必至だ。

米中貿易部分合意の基盤が脆いだけに、香港問題の影響が飛び火する可能性もある。

市場は「第一段階」の各論文書化、「第二段階」の交渉開始をにらみ警戒感を解けず今後の展開を注視している。

金市場の視点では米中合意は売り要因、交渉とん挫は買い要因。2つの引力が引っ張り合い1500ドル挟む展開。

さてさて、凄い台風だった。

風速40メートルという風が大きな幹の木を根から引き抜くほどのエネルギーを見せつけられた。第二の故郷、福島からは阿武隈川氾濫の知らせがLINEで多くの知り合いから寄せられた。県内中通りを縦断する河で、私も知り抜いている箇所ゆえ現場の緊張感がヒシヒシと伝わってきた。白河、須賀川、郡山、本宮、伊達と至るところで越水、決壊。

ところでダムの緊急放流。これは量的緩和で中央銀行が有事対応としてマネーのバルブを緩めることとイメージが重なる。副作用が大きいから慎重にマネー放流を決定せねばならぬ、その後も事態の推移に応じてバルブを締めたり緩めたり。本来、下流の住民へのダメージをコントロールする措置だが、その住民への緊急放流時期の告知が難しい。二転三転して混乱のケースもあった。中央銀行の金融政策も市場への告知(フォワードガイダンス)、コミュニケーションが常に問題視される。

添付したイラストは筆者の金ムックで使った絵だが、ドルの緊急放流で世界中にドルが溢れ、ドルの価値が希薄化して「紙幣のように増刷など絶対できない金」が見直されたのだ。このイラストではバーナンキFRB議長がドルのバルブを緩め、下流の中国、胡錦涛主席が文句を言っている。過剰流動性が流入して不動産バブルが起きている。勝手にドル緊急放流は止めてくれ!

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時代は移り、今は人民元不安でマネーが中国から流出。習近平氏は米国に勝手に緊急放流止めるな!と文句たらたらが本音。時代の流れを感じるね。

 

2019年