2019年12月25日
NY金が本欄でずっと語ってきた安値圏をやっと本格脱出した。クリスマス休暇中の薄商いの地合いで、投機筋がまとまった買いを入れて心理的抵抗線の1500ドルをブレークさせた。
マクロの視点に立てば、米中軟化ムードで英国EU離脱も一安心という状況。安全資産=金は売られやすいはずだが、教科書通りに動かないのが最近の金価格だ。
冷静に見れば、米中「第一段階」貿易交渉合意へ動くと言っても米中冷戦は続く。ハイテク覇権争い、特に中国政府のハイテク産業への巨額支援金(特に5G関連)などは中国側が絶対に譲歩できない。更に香港、ウイグル自治区の人権問題も中国側は「米国の内政干渉」と強く反発している。ここでは妥協の余地は一切ない。加えて台湾の選挙も視野に入ってきた。
米中問題に関しては株式市場が楽観論に走りがちだが、金市場は一貫して懐疑的だ。
米国大統領選挙も2020年の最大関心事だが、共和、民主どちらの候補が勝っても金には買い材料となる。
トランプ再選ならツイートひとつで相場が乱高下するマーケットの不安定な状況が続く。民主党候補当選なら株価暴落リスクがある。最有力のバイデン氏は法人税率を21%から28%への引き上げを唱えている。この法人税に州ごとの地方税を加算すると米国企業が払う税金は30%を超し、欧州より高くなる。トランプ減税を囃して上げてきた株式市場にとっては前提条件が崩れることになる。急進左派のエリザベス・ウォーレン上院議員に至ってはフェイスブック解体など過激な反市場的政策を掲げているので、株価は25%暴落と予想される。あまりに過激すぎて最新の調査では支持率が低下気味だ。
なおトランプ大統領の弾劾訴追が残る。しかし共和党が過半数を占める上院で2/3の賛成投票が必要だからまず成立しない。しかも民主党のリーダー、ペロシ下院議長が「弾劾」に必要な具体的証拠を欠くままに「とにかくトランプはけしからん」的な理由で強行突破したことで一部世論の反発を招いている。最新の調査では弾劾賛成・反対が48%ずつと真っ二つに割れてきた。トランプ支持者は「弾劾訴追」に反発して団結する傾向にある。結局、弾劾問題は米国内の亀裂を深めただけと言える状況だ。マーケットは弾劾問題を全く材料視していない。
金融政策面では緩和基調が続き金には追い風だ。足元ではスウェーデンがマイナス金利から脱却する事例も出てきたが、総じて日欧のマイナス金利政策に大きな変化はない。
このような市場環境で金市場は1500ドル近傍で越年となりそうだ。中国の正月=春節は中国で最も金が売れる時期だ。ヘッジファンドが金空売りしにくい時期でもある。
金市場へのマネー流入も良質の投資マネーが目立つ。
ドル円が殆ど動かないこととの対比が鮮明な金市場である。
今日の写真はらく山@京都祇園の大将。普段は弟子に厳しいので珍しい笑顔。徹底的に素材と味にこだわる職人気質。来月は聖護院かぶらの蕪蒸しとか、京都風まる餅、白味噌のお雑煮が楽しみ。