豊島逸夫の手帖

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渋野日向子プロに見る女性投資家の資質

2019年11月22日

スマイル・シンデレラの渋野日向子プロは日本のゴルフ界を変えた。これまでゴルフに興味なかった若い人たちに、日本人でもやればできるとの希望を与えた。ゴルフ人口が増えれば正の連鎖でゴルフ市場も縮小均衡から拡大均衡に転じる。

更に筆者は、シブコの登場が日本の投資市場にも光明をもたらすと見ている。

彼女はトレーダーでも間違いなく成功した人材だ。

まずフィジカル。投資もまず体力勝負だ。

そしてメンタル。

ゲーム前半から調子良ければ波に乗り、トーナメント4日目に8打差大逆転というゴルフ史上に残る逆転勝ちっぷりを演じてみせる。

彼女の真骨頂は前半にもたつき出遅れる展開になった時だ。

その時の心理状態は、本人曰く「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、なんでやねん!!!と思いました。」とトレードマークの笑顔で述懐するので、下品な言葉も明るいユーモアになる。

そして後半戦に入り、一つ良いショット或いはパターが決まると「これだ!ゆける!」とポジティブに切り換え、なんとかスコアをまとめてみせる。

ゴルフも投資と同じくリスクとリターンを常に考えゲームを進めねばならない。これを「コースマネジメント」と言う。

あの歴史に残る全英女子オープンで、解説の岡本綾子プロはゲームを決めたのが12番ホールと看破した。池越えで一発狙うか、安全策で回り道して地道にスコアを稼ぐか。決断のホールだった。

こういう局面では、失敗すれば打球は池に落ちて大叩きのリスクと、そのリスクに見合う高スコアというリターンが見合うか否かを瞬時に判断をせねばならない。

その時の風向き、風速、体力の消耗度など様々な要因を考慮して、彼女は敢えて池越えショットを選択した。

結果は若干ミスショット気味であったが、僅か30センチの差で際どく池を超え、ご褒美のバーディー(高スコア)をゲットしたのだ。岡本解説では「最後は気力で持って行った」。

豊島解説では「投資も最後は胆力の勝負」。

筆者がスイス銀行のトレーダー時代にアシスタント・トレーダーを採用する際に、最終面接では「胆のう肝臓のレントゲン写真」を要求したことがある。肝臓が生まれつきデカい(病的肥大ではない)人間はストレスにも、そしてアルコールにも耐性が強いのだ。

いかにも体育会系の体格に惚れて採用した男子が、現場で相場の流れがアゲンストになるとオロオロするばかりで、結局使えないという苦い体験を経ての豊島流リクルートだった。その男子の隣に座る貧弱な体型の女子が内臓は極めて丈夫で、慰め・叱咤役に回っていたことが今でも印象に残る。

当時の筆者は「男女平等」などと美しい理想を考える余裕もなく、ひたすら「使える人材」をチームに加え自分は楽をしたい(笑)という思いで動いていた。

その結果はチームの7割が女性ディーラーとなった。

このような実体験があるゆえに渋野プロの活躍を見て、日本人の若い女性にはまだまだ隠れた投資向き逸材が多いと確信しているのだ。

かんぽ問題、老後2000万円問題について、日本郵政、金融庁を叩き、現場での修羅場を語るのは易しい。しかし最大の問題は、その後に見える光明は何かということだろう。

その一つが若い女性潜在投資家集団。

シブコに続けと1998年生まれの所謂「黄金世代」と呼ばれる女子ゴルフ集団が、今年は相次いで初優勝している。更に2000年生まれの「プラチナ世代」、更にジュニアゴルファーたちの目覚ましい成長と、潜在女子ゴルファー集団が全国的に出現しつつある。

投資の世界でも、コツコツ積立のパッシブ運用だけではなく、アクティブに投資できる女性投資家活躍の予感がする。

ベテラン投資家たちにとってもこれは他人事ではない。新たな投資集団の市場参入は、マーケットの流動性を増やし、市場の活性化に資する。市場に深みが増すことで既存投資家も大きな恩恵を受ける。

まずはターゲットはスマホ世代ゆえ、投資アプリの充実化が必須だ。

キャンディークラッシュの如く、質問に答えればレベルアップしてゆく上昇志向の仕掛けが効く。最後に例えば10万円相当の「人参」をぶらさげることもモチベーションを刺激しよう。

女子会、デート、家族との会話などを通じて、投資の健全な醍醐味を伝える運動を草の根レベルで全国的に広げてゆく。

高校生の「投資シミュレーション甲子園」。そこでシブコ級のスターやチームが誕生すれば最高。

ここは業界超党派で取り組むべき命題であろう。

「老後2000万円問題」以来、ゴールド・セミナー参加者の中でも女性の比率が益々高まっている。ここ数年の傾向が加速した感じだ。とても真面目に聴講してくれるので私も話し甲斐がある。

今日の写真はアーカイブの中からセミナー風景。

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2019年