豊島逸夫の手帖

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FRB冬眠へ、覚醒後の一手は

2019年12月11日

今回は「無風」のFOMCだ。市場参加者の全員が「動かず」と予測する状況も珍しい。

直近の米経済成長率は1.9%から2.1%に上方修正。雇用統計は良い数字が並ぶが、利上げが考慮されるほどインフレ率は上昇していない。FRBは冬眠に入ったと言われる所以だ。

2020年も通年で「動かず」と見る予測も少なくない。仮に動いても6月くらいに利下げ1回程度か。次の景気後退期に備え、金利政策の自由度は出来る限り温存しておきたいところだ。

経済政策への注目度も金融政策から財政政策にシフトしよう。

大統領選挙を視野に共和党も民主党も積極財政を唱える。市場は財政赤字リスクを意識しよう。債券市場が相場変動の震源地となりがちな市場環境となろう。

トランプ大統領の「FRB叩き、利下げ強要」発言は続きそうだ。株価維持のための利下げ圧力というより、株価下落時に責任をFRBに転嫁する局面が増えそうだ。

人事面ではFOMCが徐々にトランプ色に染まってゆく。

2020年には空席のFRB理事ポストを二人のトランプ派が占めることになろう。その一人のジュディー・シェルトン氏は保守派のエコノミストだが選挙陣営の元幹部。メディア露出も多いが最近はFRB理事指名承認を意識してか控えめな論調が目立つ。市場目線では2020年にFOMC内で利下げ推進派のハト派が二人増えることが意識されよう。FOMC参加者の金利予測分布を示すドット・チャートに少なからず影響を与えよう。

それでもパウエル議長は「データ次第」の金融政策決定を語り続けるだろう。とは言え、その実態は「米中協議」次第となっている。今回のFOMCも対中第四弾追加関税発動が予定されている12月15日以降であったなら「無風」とは言い切れなかったであろう。

その米中通商交渉は12月15日追加関税発動も米中貿易「第一段階」合意も先送りのシナリオが浮上している。結局、妥協に向け米中どちらも先に動きたがらない。焦点は米農産品の年間4~5兆円相当購入の件だ。中国は追加関税が撤回されれば購入を実行の姿勢。対する米国は購入が合意文書に明記されれば追加関税撤回の姿勢だ。更に購入実行の検証も問題視される。米国側は四半期ごとの実績検証を要求。更に予定購入額の未達許容範囲を10%以内と定めることを要求しているようだ。

トランプ大統領の意図としては、当面農民票獲得のため対中強硬路線を唱え、重要な予備選が重なるスーパーチューズデー(3月3日)までには「第一段階」合意で株価が最高値更新する希望的シナリオが透ける。好調雇用統計はトランプ氏に「対中強硬で株価下落も辞さず」との心理的余裕を与えた。

このような状況を映し、足元で株価は動かずだが、恐怖指数VIXだけが15台と最近としては高水準を維持していることが示唆的だ。

金を含め市場全体は超静か。

さて今日は年末恒例エコノミスト懇親会(日経、テレ東、日本経済研究センター主催)。一年経つのは早いものだ。。。もう、そんな季節か。。。

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そして忘年会の肉食攻勢は続く(笑)。

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2019年