豊島逸夫の手帖

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12月相場騒乱の予感ジワリ

2019年12月3日

昨年12月にFRBは年4回目の利上げを強行。相場は年末年始にかけ大荒れとなった。その苦い記憶が未だに残るが、今年は金融緩和政策、世界景況底入れの兆しを背景に世界的株高が進行したことで楽観視されてきた。そして迎えた12月相場初日。中国、欧州のPMI景況感指数も好転したことでNYダウ平均株価は寄り付き前日比50ドル超上昇。まずまずの船出と思えた。しかし安堵感は1時間も続かず。米国ISM製造業景況指数が48.1と悪化。ダウ平均は直ちに前日比200ドル以上急落。事前予測では50前後の水準が期待されていた。更にトランプ大統領が米国製造業救済を明示してブラジルとアルゼンチンからの鉄鋼・アルミニウムに追加関税を発動に動いた。両国の「自国通貨安操作」を槍玉に挙げているが、アルゼンチンは経済危機で通貨防衛に追われる国だ。大統領選挙を睨み、貿易戦争最大の武器「関税」を使いまくる「無茶ぶり」の様相である。

そもそもブラジルもアルゼンチンも「為替監視国」に指定されていない。これは「為替監視国」に指定されている日本にとっても無視できない状況だ。2020年大統領選挙戦でトランプ氏が追い込まれる状況になれば、日本に対して為替条項を蒸し返してくる可能性もちらつく。

更にウォール街で「債券市場の怪」と話題になる現象も生じた。株安、ドル安なのに米国10年債利回りが1.79%から1.81%へ上昇したのだ。米国債増発による債券需給悪化、更に低金利環境での社債発行ラッシュによる民間債務膨張のリスクが意識されている。時あたかもNYレポ(短期金融)市場では資金不足による短期金利上昇圧力がかかりNY連銀は年末に向け経常的に緊急流動性供給オペを実行中だ。債券市場が発する異音は市場の注目が金融政策から財政政策へ移行する兆しとも読める。

米中通商問題もいよいよ12月15日に消費財中心の対中追加関税発動期限を迎える。市場では大方発動延期あるいは撤回を織り込みつつあった。米中両サイドも最終的には「共倒れ」を回避するとの読みであった。

しかし再び「関税マン」の面を露わにするトランプ大統領の言動に市場の楽観論も揺らいでいる。

最新のツイートでは、ISM指数悪化が映す米国製造業窮状の責任をFRBに転嫁。パウエル議長の不十分な利下げ政策がドル高を招いたと批判をエスカレートさせている。

市場では12月10~11日に今年最後のFOMCを控え、FRBは当面再利下げに動かずとの予測が大半だ。注目は恒例のパウエル議長記者会見。前回は「利上げの必要性が当面無し」との表現で緩和姿勢継続を明示した。今回経済指標悪化を受け「利下げの可能性」を明示すれば、トランプ大統領の圧力に屈したとの謗りを受けるやもしれぬ。しかし株式市場は緩和なら大歓迎である。対して債券市場では金利乱高下のリスクが無視できない。そこで債券市場の乱が株安を誘発するシナリオも考えられる。外為市場では円高リスクが再び意識されよう。

今年は平穏かと思われた12月相場だが、まだ予断は出来なくなってきた。

VIX(恐怖指数)は11から14に急騰。NY金は依然安値圏だが1450台から1460台に上昇中。金市場には買いのマグマが徐々に蓄積している感じ。

今日の写真は出張中の飛行機機内から見えた珍しい光景。機体の影が虹色の輪の中にスッポリ。



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2019年