豊島逸夫の手帖

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巨大IT企業に司法の異音、市場は動揺

2019年6月4日

ナスダックが1.5%超急落した。個別に見ると株価下げ幅がフェイスブックは7%、アルファベット(グーグル)は6%、アマゾンが4%を超えている。

震源地は米司法省と米連邦取引委員会。フェイスブックとアルファベットの反トラスト法(独禁法)疑義につき、まず両監視部門が「省際問題」を内部調整して捜査に動くとの報道がナスダックを揺らせているのだ。現段階では報道が独り歩きの印象が強い。アップル、アマゾンまで煽りで売られている。

背景にはIT企業が巨大化して自由競争が阻害され、個人情報まで操られる状況になるとの懸念が指摘される。市場ではインスタグラムやホワッツアップなどを相次ぎ買収して巨大化したフェイスブックに解体の可能性が語られる。これまでも噂として流れていたが、当局が監視や規制に動くと市場も絵空事として切り捨てることが出来ず「売り」で反応する。

総じて市場は巨大IT企業株価の再評価を開始したと言えよう。これまでのビジネスモデルが当局により再点検される。

議会もこの問題には超党派で対応し始めた。下院司法委員会は反トラスト法の観点で、公聴会や情報開示を求める可能性を示唆している。

3日のNY市場は引けにかけ、この問題を嫌気してマネーの安全性への逃避が加速した。メキシコからの全輸入品に段階的追加関税発動への市場初期反応が一巡したところで、新たなサプライズに直面して揺れている。

安全資産の代表格とされる米10年債利回りは下げが加速して2%の大台攻防が視野に入る。円は108円台攻防の様相だ。金は1300ドルのレンジ上限を上抜けた。

このような市場環境でFRBがサプライズ利下げに動く可能性も否定できない。3日にはセントルイス連銀ブラード氏が近く利下げの可能性を示唆して注目されていた。ディスインフレ傾向が定着する前の予防的利下げから、緊急利下げへと切迫感が強まってきた。シリコンバレーに響く異音に市場が身構えている。

金市場は1300ドル以上でも新規買いが出始めた。年内3回利下げ確率も高まり、金利を生まない金には追い風が吹いている。暫く凪の状況だったが市場に沈殿した買いエネルギーが一挙に噴出している。これから金の夏相場幕開けだよ。

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2019年