豊島逸夫の手帖

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あけましておめでとうございます。

2015年1月6日

昨日の仕事始めは早朝からバタバタで、とにかくコメント書いて、挨拶抜きでした(笑)。
私の年末年始は8日連続の午前半日スキー!
写真を4枚添付しましたが、まず、ピーカンの日のガーラ湯沢。

2027a.jpgそして、スキー中のカーボローディングには携帯に手頃なサイズの柚子最中。

2027b.jpg帰り(といってもランチタイムですが)の車中で、自家製コロッケ・野菜・魚沼米のおにぎり・ノンカフェイン茶の昼飯。

2027c.jpg食べたら即、東京駅まで爆睡。
帰宅して、我が家のぶさ猫と寝床で遊ぶ。

2027d.jpgなんとも、健康的でリフレッシュした休暇でした。仕事がたまっているのは、完全にスルー!そのツケが昨日廻ってきたのだけど。とにかく現時点では体調ベストです。
筆致も、久しぶりの物書きで、新鮮な感覚。我ながら筆が走ってます!
というところで、今日のブログ。

原油100ドル台の時代には、原油高騰が経済成長の阻害要因として警戒された。中東地政学的リスクを映す原油高が、株安も誘発した。ヘッジファンドなどの投機マネーが原油先物市場で暴れ、庶民生活に打撃を与えることが政治問題化して、市場規制案も生まれた。ボルカールールに基づくドッドフランク法という金融改革法案だ。その結果、市場のメジャープレーヤーであった大手投資銀行は、自己勘定による原油などの売買を制約されることになった。そこで、多くの投資銀行は、トレーディング部門の縮小・閉鎖に動いた。

市場全体の流動性は著しく低下。投機筋が大きな売買注文で市場を揺さぶると、価格変動(ボラティリティー)が増幅される現象が頻発するようになった。高頻度取引の発達も、その傾向に拍車をかけた。
その間、原油市場の構造は米国シェール革命により変化の時代を迎えていた。危機感を高めたOPEC諸国は、原油価格調整役としての役割をみずから放棄して、シェアー確保に走った。
そこで、先物市場の投機筋も、「原油は買い」から「売り」の戦略に切り替えた。ところが、投機筋の「売り」に対して、買い向かうプレーヤーが殆どいない。ドッドフランク法で、市場の潤滑油役が撤退したからだ。市場内には一部の商品専門トレーダーしか残っていなかった。
こうなると、投機筋にとっては格好の草刈り場だ。
原油価格は、短期間に半分以下の50ドルを割り込むほどの低水準に落ち込んだ。
車社会での原油急落は減税効果に似た影響を持つので一般庶民にとっては歓迎すべき現象のはずだ。

しかし、市場では世界経済の低成長を映す要因として株安が誘発されている。NY株では、エネルギーセクターの売り圧力が、株価指数を押し下げた。中央銀行も、物価安定目標からの下振れ要因として警戒の姿勢だ。物価安も程度問題で、度を越すと、ディスインフレからデフレへ進行しかねないリスクをはらむからだ。庶民の家庭でも、妻は物価安を歓迎するが、夫は勤め先の企業業績が心配になる。
マクロ的に、株で大儲けした投資家の所得の一部が、一般庶民への所得再配分される分には、原油急落も所得格差是正に寄与するかもしれない。
とはいえ、ユーロ圏の物価水準はマイナスに転じることが予想され、中国でさえ、物価上昇率が1%台まで下落してくると、原油安がもたらす「経済の低血圧症候群」も無視できまい。
なにより、市場が気味悪く感じていることが、金利下落の加速だ。米国10年債の利回りも2%の大台攻防となってきた。南欧のスペイン・イタリア10年債は、ギリシャ不安にもかかわらず既に1%台まで下落している。ギリシャ危機2.0は、金融安定化のための安全網により近隣諸国への伝染の可能性は薄いとも読める。しかし、この時点での南欧国債買いは、明らかに欧州中央銀行(ECB)による国債購入型量的緩和をアテにした投機買いであろう。資金調達コストが米国より南欧のほうが低いという現象は明らかに異常だ。

株式・債券・外為市場は戸惑いを隠せない。
原油安を素直に喜べない株式市場。説明できない世界的低金利を持てあます債券市場。ドル高・円安進行のはずの年が円高で始まった外為市場。
プロの間には、(筆者も含め)昨年のトラウマが未だに根強く残る。
ちょうど一年前。テーパリング(緩和縮小)の年は、米国債利回り3-4%まで上昇と殆どの市場関係者が読んでいた。それが結果的にほぼ全員が外したからだ。
今年は、米利上げ開始時期予測が今年半ばに集中している。そこで市場には疑心暗鬼の心理も芽生えるのだ。
年初から、マーケットは、あみだくじの如くこみいった複合要因にすくんでいる。

こういう不安な時こそ、金は上がるもの。1200ドル回復。円高で円建てでは相殺されるけど。とにかく1200ドル前後の水準を安定的に維持しているね。他の投資媒体がこれだけ荒く動くと金の安定性が目立つ。
地味だけど、ジワリ脇役として、渋い味だしてるよ。

2015年