2015年11月25日
昨日は、ベルギー・ギリシャ、テロの要衝と題して書いた。
その原稿を書いた数時間後に、トルコがロシア軍機撃墜のニュースが飛び込んだ。
先週、トルコ・アンタルヤで開催されたG20では、プーチン大統領とエルドアン大統領が直接会談して、来月ハイレベル両国会合を決めたばかりだった。
しかし、トルコが主張する「ロシア機のトルコ領空侵犯」が続いていた。今回の伏線となったのは、先月、ロシアのドローン(無人機)がトルコ側のミサイル攻撃で墜落した事例と思われる。その後、トルコの現地紙では、シリア領内に「飛び地」のごとく存在するトルキスタン人居住地域へのロシア軍空爆を非難する論調が溢れていた。
トルキスタン人は、トルコ人にとって「いとこ」のようなものだ。そして、昨日も同様の見出しがトルコ紙に躍るなか、ロシアの有人機が撃墜されてしまった。
NATO加盟国がロシアと空中で撃墜のような状況になるのは冷戦以来初といえる。
オランド大統領が、調整役として対イスラム国包囲網行脚の第一歩を踏み出し、ホワイトハウスにオバマ大統領を訪ねる数時間前の出来事だった。訪問相手としては、メルケル首相そしてプーチン大統領が続く予定だ。
オランド・プーチン会談は、もしキャンセルされなければ、ロシア・トルコ関係修復が最大の議題となろう。
NATOは、公式に今回、ロシアの領空侵犯を認めているが、本音は、「極めて重要なタイミングで、トルコには自制してほしかった。」のではないか。対イスラム国攻撃でロシアを含む国際協調実現という大きな命題の中では、ロシア・トルコの二国間衝突は是が非でも避けたいところだろう。とはいえ、パラシュートで脱出したロシア人パイロットに向かい銃撃している画像がSNSで流れ、それが真実とすれば、明らかな国際法違反だ。
オランド大統領の訪問を受けたオバマ大統領も、NATOを弁護しつつ、ロシアには警告を発するという苦しい綱渡りを強いられる。
そして、プーチン大統領は激怒。憤懣やるかたないという表情で「後ろから刺された。」という極めて強い表現を使った。
今回の事件で、「漁夫の利」を得たのが、ほかならぬイスラム国ではあるまいか。IS包囲網形成中に内輪もめが起きたからだ。
今後の対イスラム国攻撃は、NATOとロシア・イランが独自の道を歩むことになるかもしれない。場合によっては、後者に中国が入るシナリオも想定される。マリのテロ事件では中国人犠牲者が出て、更に、中国人人質がイスラム国により殺害の事例も起きた。とはいえ、「西側がテロで騒ぐときは、自国で犠牲者が出たときだけ。中国国内の少数民族波乱は人権問題と関連づけテロとはみなさない。」との本音が論調から透ける。この問題については、本欄19日付け「中国は対テロ国際協調に反発の兆し」を参照されたい。結局、西側とは一線を画すとなれば、中国がロシア・イランに組するシナリオが浮上するのだ。
なお、トルコの視点では、4つの問題が複雑に絡み合う。
イスラム国撲滅。有志連合の一員としてアサド政権打倒。シリア領内のトルキスタン人保護。そして、台頭するクルド人勢力の分断。
トルコは、米軍にシリア空爆用の基地使用は許可しているが、敵対関係にあるクルド人による精鋭部隊が、米国にとってはシリア国内における貴重な地上軍にもなっている。
そして、エジプト・チュニジアでも新たなテロ事件が発生。
漁夫の利を得たイスラム国更に他のテロ分子が拡散するなか、事態は解決とは逆行の方向に動いている。
というわけで、緊張高まり複雑化するテロ問題。
今週土曜日の例のABC朝日放送の土曜朝90分情報番組で、解説することになったが、あまりに様々な要因が絡み合い、どうやってほぐしてゆくか。。。生放送直前まで事態は流動的で、なにが起こるか分からないしね。
今週末は、土曜が大阪。そして、日曜は仙台で親子で考える資産運用セミナー。主催河北新報社。
昨晩は、写真の旨い物食べている最中に、ロシア軍機撃墜のニュースが飛び込んだのだ。
ポルチーニとチーズのリゾット。
同じくポルチーニとホウレンソウを練り込んだ自家製パスタ。
そして、焦げ目がパリパリで、絶妙のトマト味の真鯛グリル。
もう、ポルチーニもシーズン終わりなので、今年最後と思って食した。
それから、内田恭子さんとの朝日新聞対談web版のほうが、もう出たよ↓本紙掲載も近々。
http://www.asahi.com/and_M/living/SDI2015112433921.html?iref=comtop_fbox_u07