豊島逸夫の手帖

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テロの要衝、ベルギーとギリシャ

2015年11月24日

筆者がアテネで路上生活者を見かけたとき、知人のギリシャ人は「しょうがない」という感じで、肩をすくめた。

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そのとき、話題になったことが、2011年1月21日付け欧州人権裁判所(欧州の人権救済機関)の判例だった。

2008年、アフガニスタンから逃れ、難民申請者となり、ギリシャに上陸するも、難民申請せず、ベルギーに入国して、難民申請した事例だ。ダブリン協定では、EU圏に最初に入国した国が難民認定の責を負うので、ベルギー政府は2009年6月に、本人をギリシャに送還。しかし、本人は、不衛生な状況下で拘留され、充分な物質的援助もなく路上生活者となった。

判決は、ギリシャ、ベルギーともに「両成敗」。

まず、ギリシャ側には、劣悪な拘留状況とギリシャでの生活状況、難民受け入れ手続きの不備、充分な精査もなくアフガニスタンへ送還のリスクの点で協定違反を認めた。

次に、ベルギー側にも、本人をギリシャに送還して、同国の難民受け入れ不備のリスクにさらしたこと、更に、劣悪な拘留・生活状況に本人をさらしたことの協定違反を認めた。


この判例により、ベルギー政府は、難民申請拒否のケースに関しては、かなり慎重に処理せざるを得なかった状況が想定できる。結果論だが、テロリスト集団から見れば、相対的にEU圏内へ侵入しやすく、国内で摘発されにくい国に見えたのかもしれない。

いっぽう、ギリシャはチプラス首相が、表向きは、難民問題重視の姿勢を見せ、選挙公約にも掲げ、難民センター設立に動いた。とはいえ、財政困難な国ゆえ、最終的にはEUが援助しているのが実情だ。

パリ同時テロ後も、現地紙では、警察関係者が「欧州に大量流入する難民たちからジハード思想に染まった人物を特定するのは殆ど不可能に近い。誰が網の目を通っているのか分からないのが実態だ。」と語っている。

実態は、難民がギリシャの島しょ部に上陸後、難民センターで指紋を採取され、かたちばかりの尋問の後、6か月間の国内滞在許可書を交付される。そして、大型船に乗り10時間前後かけてアテネに到着して、多くは、隣国マケドニアを目指す。偽装パスポート入手も可能だ。しかも、パリ同時テロ勃発前は、よほどの犯罪歴が明らかでない限り、マケドニア通過も容易だった。しかし、事件後は、同国も国境管理を厳格化したので、国境地帯に数千人規模の難民がひしめいているという。ギリシャ国民も、その中に、IS分子が混じっていないかという不安を隠せない様子がうかがえる。

いっぽう、ギリシャ側の国境監視は、公務員削減中なので、手薄にならざるを得ない。結局EU頼みということになりそうだ。

ギリシャ、ベルギーがテロリストの要衝化した背景の根は深い。


そして最初に掲示した写真。

日本でいえば、本石町の日銀前にあたる、ギリシャ中央銀行前で見かけた路上生活者。取り締まる警官も少なく、通行人にも他人の心配をしている余裕はない様子。

次の4枚は、一昨日発売の日経マネー別冊金特集。

お馴染み、亀井幸一郎、池水雄一と3人の2016年価格予測が興味深いよ。私だけ、プラチナと円建て価格の予測も入れているけど。それから、私の2015年、これだけ外しました反省会も勝手にやってる。2016年予測もプラチナは早くも外れてる(笑)。下値1000ドル予測のところ、既に850ドル台。まぁ、正月までに戻すかな。ちょっと無理っぽい。私があえて、こういう事やるのは、プロでも予測は当たらないことを示すため!そのかわり長期2020年7000円台はすごく自信あるのだ。だからこそ、コツコツ貯める!!

この7000円説、セミナーで必ず質問される。これだけブログに書いていても、「本当ですか、大丈夫ですか?」。信じたいけど、俄かに信じがたいという感じかな~~。予測変わってませんよね!って、何度も確認されるのだ。

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なお、同別冊には、お馴染み為替のプロ、尾河眞樹との対談と、フリーキャスター兼社外取締役の江連裕子との世界の金市場廻ってきましたレポート対談も。なんか、チーム・ジェフのメンツで揃えた感じもあるな(笑)。

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2015年