豊島逸夫の手帖

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利上げ先送り、円高で大手ヘッジファンド閉鎖

2015年10月14日

日経マネー30周年記念シンポジウムで講演。

今週土曜日17日に八重洲で開催される首題のシンポで講演するよ。

お題は「どうなる2016年、世界のマーケット」

他の講演者は澤上さんとか桐谷さんなど。

申し込みは


http://ac.nikkeibp.co.jp/mon/30/


そして、今日の本論。

大手ヘッジファンドのフォートレス・インベストメント・グループが、13日ホームページで「フォートレス・マクロ・ファンドを閉鎖して、年末までに全ての運用資金を顧客に返還する。」と発表した。)

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NY市場も相場がそれほど荒れていなかった日なので、ウォール街は、この話題でもちきりだった。

「フォートレスのノボ」といえば、創立者で運用責任者でもあるノボグラーツ氏と知られる。派手なスーツやネクタイでテレビ・投資コンファレンスの常連スピーカーだったので、数々の語録が残っている。

日本株に対して一貫して強気のスタンスを貫き、円・ユーロは売りと、公言してはばからなかった。筆者がNYで、ヘッジファンドなどに日本株について講演したときも、質問で彼の名が引き合いに出されたものだ。

日本株上昇基調に陰りが見えたときでも、「日本株には強気」と公の場で語っていた。

外為関連のポジションは、本欄6月8日付け「130円まで真空地帯、ヘッジファンドどう動く」で書いたように、125円前後から更なる円売りポジションを醸成するファンドが多かった。フォートレスも、その円安派だったと見られる。

その間、8月24日には、一気に短時間で116円台まで円高が急進して、多くのストップロス(損失限定)のための円買いが発動される一幕もあった。

更に、ブラジルへの投資が傷口を広げたと見られる。

昨年の投資コンファレンスでは、ルセフ大統領が再選挙で負けると予測していた。新政権誕生期待からレアルとブラジル株の上昇に賭けたとヘッジファンド業界では語られている。

ホームページ上で、ノボグラーツ氏は、CIO(運用最高責任者)として、「この二年間は極めて厳しかった。現状の市場が、ベストの成績を達成できる環境とは思えない。」と苦渋の決断であったことを明らかにしている。

ノボ氏は、大学時代にレスラーだったので、タイムズスクエアでプロレス・マッチを開催したり、NBA(全米バスケットボールリーグ)のチームにも出資していたので、カリスマ性が強く、ファンも多い。しかし、運用実績マイナスが続き、ついに閉鎖に追い込まれたわけだ。

8~9月の世界株安連鎖で、多くのヘッジファンドが、損失を記録している。米国最大の年金基金カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は、はやばやと、ヘッジファンドを運用対象から外すと発表していた。

11月の決算期に向けて、更なるヘッジファンドの縮小・閉鎖が起こる可能性が市場では指摘されている。

そして、金プラチナは、その利上げ先送りで買われてきたが、ここらで、一巡。

毎日新聞に、金についての、心を打たれるエピソードが載っていた。アルメニア難民の話。

「出国時、トルコ政府は身の回り品の携帯しか認めず、母はお金を小さな金塊に換え、一つひとつ布に巻いて服に縫いつけ、ボタンに見せた。これがフランスのマルセイユ港に着いたときの一家の全財産だった。」

これこそ資産としての金の原点だよね~~~。

2015年