豊島逸夫の手帖

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TPP早くも暗雲、ヒラリー反対、世界経済ブロック化リスクも

2015年10月8日


ヒラリークリントン氏が、PBS(米国公共放送)でのインタビューで、TPP反対の立場を明らかにした。「為替操作国が協定に入っていない」「製薬会社に有利、患者に不利」なので憂慮していると語った。「雇用を増やし、米国人の賃金を上げるという、自らの高い目標と整合しない」と主張している。

同じ民主党大統領候補サンダース議員も、「TPPに失望」と述べ、トランプ氏も「悪しき取引」と批判している。

TPPの米議会の承認は、通常の手続きより簡素化されているが、まだ紆余曲折がありそうだ。


一方、中国・ロシアからは、TPPに対する不協和音が聞こえてくる。

中国の国営新華社通信は、6日、TPPに関し「中国は将来の加入を排除しない」と伝えたが、実態は、既に「一帯一路(新シルクロード)構想」を立ち上げ、中国主導の意図をにじませている。

対して、オバマ大統領は、「グローバル経済のルールは、中国のような国ではなく我々が書かなくてはならない」と強く語る。


米露関係も、最悪に近い状況にある。欧米では、米中関係より米露関係がはるかに強く意識されている。習近平訪米もプーチン訪米の影にかすんだほどだ。更に「ロシア、カスピ海からシリアに巡航ミサイル発射」の最新報道により、事態悪化は必至の情勢だ。


更に、欧米間のTTIP(環大西洋貿易投資連携協定)合意も進行中だ。

地域自由貿易協定は、世界経済のブロック化のリスクをはらむ。

TPP合意は歴史的快挙だが、これからが本当の正念場であろう。


国内に目を転じると、今朝朝一で「8月の機械受注、前月比5.7%減、市場予想大幅に下回る」。次から次へと、日本経済の悪いニュースが重なるね。益々、追加緩和催促相場になりつつある。

この点については、昨日夕方、臨時で日経電子版に以下の原稿書いたよ。


海外勢、黒田発言に異例の関心


今日の日銀金融決定会合そして黒田総裁の記者会見には、海外投資家たちが異例の注目を示した。更に、第三次安倍改造内閣も含め、維新の分党に至るまで、日本の政局にも、これまでにない興味を示した。これ即ち、日本株への期待にほかならない。

8~9月の運用実績は、一部にリーマンショック以来のパフォーマンス悪化が伝えられるほど、欧米機関投資家は、市場のボラティリティー(乱高下)を持て余している。すがるような気持ちで、日本株に上昇余地はないのか、精査しているのだ。


黒田発言に関しては「追加緩和への言及ありやなしや」。この一点に尽きる。あとの「禅問答」は、説明しても、聞く耳を持たない。結局、言及なしということで、失望感とともに、多くの会話も切れた。あと一歩踏み込んだコメントでもあれば、日本株への期待感も維持されたであろう。

しかし、多くのヘッジファンド、それも大手が、マイナス・リターンに沈むなかで、顧客の解約も増加中だ。根気よく、日銀と付き合う余裕もない。ダメなら、新たな物色の対象を探すだけだ。


基本的には、9月米雇用統計悪化で、利上げ観測が2016年に後ずれしつつあるなかで、時間制限つきのリスクオンが醸成されつつある。原油・金そしてVW問題にもかかわらず、ディーゼル車に使われるプラチナまで買われるところに、そのリスクオンの兆候を感じる。それに比べれば、日本株のリスクなど、充分に管理可能と思われるのだが、負けが込んでいるので、なかなか決められない。だからこそ、日銀総裁記者会見の一問一答に、なにかしらのよすがを求めたい気持ちが滲むのでもあろう。

日銀の立場も、海外投資家の立場も理解できるだけに、なんとももどかしい記者会見1時間であった。


そして、今晩は、利上げ見送った9月FOMC議事要旨発表があるけれど、9月雇用統計発表前の議論ゆえ、気の抜けたビールみたいな感じだね。今回ばかりは。


金プラチナ価格は、米雇用統計悪化後のリスクオンで上がってきた。


そして、そして、昨晩は、イタリアの秋の味覚、ポルチーニ茸づくしをマガーリで堪能しました♪


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リゾットに、パスタに、そして、グリルで。


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何とも言えない、ポルチーニ独特の香りと、熱の入れ方(こればっかりはシェフのセンス)が絶妙だった。

また、同じもの食べにゆきたい~~。

2015年