豊島逸夫の手帖

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卒ゼロ金利・中国依存症にもがく市場

2015年8月24日

ウォール街の最前線で働く若いトレーダーたちは、利上げを知らない世代だ。未知の現象への不安感が市場に満ちている。その未知の世界がいつ始まるのか。先週19日に公表されたFOMC議事録に、そのヒントを期待したのだが、結局のところ、FRB内部でも未だ意見が割れていることがあらわになっただけだった。今回の世界連鎖株安は、その公表直後の市場の当惑ぶりに始まる。株式市場は、利上げの呪縛で急落。しかし、利上げなら売られるはずの債券が買われ、米国債利回りが急低下。外為市場もドル高からドル安に反転して、利上げ後ずれと読むかのような展開になった。この市場間の利上げに対する反応の違いが、市場心理の不安感を増幅させた。

いっぽう、現場では、リスク資産を自己勘定で売買するときの資金調達コストがタダ同然で当たり前と慣らされてきたディーラーたちが、0.25%のハンディを課されることの重みをジワリ感じ始めている。低金利時代に原油先物などのリスク資産を買うにあたり0.25%のドル資金コストを払わねばならぬ。これは、重い。ただでさえ下げ基調の原油先物価格は節目の40ドルを割り込む局面もあった。

なお、ドルより低金利のユーロで資金を調達しようか、とのインセンティブも働く。いわゆるドルキャリーからユーロキャリーへのシフトという現象だ。

そして、今回の世界株安連鎖を加速させたのが、21日に発表された、中国の8月製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値の47.1への悪化だった。2009年3月以来の低水準。やはり、人民元安誘導せねばならぬほど悪かったのか、との解釈が、中国株を一段と押し下げた。特に、欧米市場が、このデータ悪化を重視して、21日のダウ工業株30種平均が530ドル安と大幅に下落した。一日の下げ幅としては、2011年8月以来4年ぶりの大きさだ。

悪い時には悪いことが重なるもので、天津大爆発では化学物質・神経ガスの存在まで報道され、更に、山東省でも、新たな爆発事件が勃発。朝鮮半島の緊張も急激に高まりつつある。

市場心理悪化を懸念した中国政府は、23日、年金基金の株投資を承認という株価下支え策を発表した。個人投資家主導の上海株式市場に最大1兆元近くの長期マネーを注入する可能性がある。しかし、市場は、なりふりかまわぬ官製マネー投入に、中国政府の焦りを読み取っている。そもそも株式市場の構造改革は一夜にして成る話ではない。株価下支え策をあざ笑うかのように、上海株は今朝も大幅安である。

日本への影響は、本欄21日付け「4つのリスク共振で世界同時株安の様相」で、円121円、日経平均1万9000円割れとしたが、為替のほうは、早くも、121円台への円高が示現してしまった。ただ、米利上げによるドル買いの引力も強力なので、121円台では円高・円安かなり拮抗する。一気に120円の大台が変わるような地合いではない。

いっぽう、日経平均は1万8000円台での下値の値固めとなりそう。

反転のキッカケは、皮肉にも、世界株安連鎖により9月利上げが延期されるシナリオ。NY株安に歯止めがかかれば、相対的に日本株のほうに上昇余地がある。

株もドルも原油も、夏季休暇モードの市場で、投機マネーが暴れているが、今週が売りクライマックスではないか。

原油価格も本欄予測の40~60ドルのレンジを下振れしても、所詮、空売り主導ゆえ、早晩、買い戻される宿命にある。既に、金は生産コストの1200ドルを大きく割り込んだところで、いち早く急反発している。

既に、NYMEXの原油先物価格に底入れシグナルが見える。日本時間今日午前9時現在の時間外取引では、2015年10月限は40.02ドルで前日比38セント安だが、2016年3月限の先物価格は、43.87ドルと僅か1セント安に留まっている。21日金曜日から、始まったこの現象は、先高のシグナルだ。

マクロ経済を俯瞰すれば、欧米経済は、危機的に悪い状況ではない。いっぽう、中国経済は構造的に悪い。輸出依存から内需主導への転換が挫折するリスクは厳然として存在する。地方政府・国営企業のかかえる膨大な債務も消えない。ただ、構造的悪化は、スローモーションで進行するので、中国発世界経済危機がすぐにも勃発する可能性は低い。中国要因が、株・国際商品反発の頭を抑える展開が最も現実的と思われる。

なお、新興国セクターが最も脆弱ゆえ、複数の国の経済危機は考えられるが、それをもって、新興国を一括りで論じることは出来ない。国別に資源安の弊害と恩恵を冷静に見極めるべきだろう。

なお、金価格は、空売りの買い手仕舞いが一巡したところで、1150~60ドル台を推移。ドル安・株安が追い風。ただし、急反発したところで、当面の頭打ち気味。まだ、利上げのハードルは残るからね。

ただ、人民元建て金価格が上昇して、中国国内の投機需要が増えていることで、下支えは強まった。底抜けリスクは遠のいた。

プラチナも順調に1000ドル以下から戻している。但し、金価格より安い逆ザヤ状態は、まだ続きそう。依然、長期的に相対的なプラチナ割安感は強く、底値圏と見る。

今夜10時からのBSジャパン、日経プラス10に生出演します。もちろん、株暴落について。



初心者向けには、今朝の読売新聞朝刊に、カラーでコメントあり。

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「株は攻めの資産、金は守りの資産」

今日の市場環境にぴったり!

あとの写真は、まず、うちの、ブサ猫の近影w


母が飼ってた猫を引き継いだ。最近、飼い主が高齢で面倒見切れなくなった猫ちゃんが多いらしいね。

だからといって、捨てることも出来るわけないし。

うちもそうなんだけどさ。

そして、山形は鶴岡の白山村直送のだだちゃ豆。


こここそ、元祖だだちゃ豆の産地。

ホンモノで旬のだだちゃマメは香るね。冷やして食べると甘みが引き立つ。

これだけで、食事になるほど、送ってもらった。

絶品!

2015年