豊島逸夫の手帖

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円の乱、ヘッジファンド動かす

2015年2月13日

昨晩は、今年に入って初めて、NYヘッジファンドなどからの問い合わせに深夜まで追われた。
特に12日夕刻に120円台から瞬間的に118円台半ばまで円高に振れた現象が注目されている。
水は低きにつくが、マネーはボラティリティーの高きにつく。
11日から12日にかけての円相場の荒い展開に、ヘッジファンドがにわかに色めきたっているのを体感した。やる気ムンムンとでもいえようか。
折から、ユーロを売り切って、次のターゲット通貨を模索していたタイミングで起きた「円の乱」。
たまたま筆者の海外向け情報サイトがある外国系通信社が流した日銀関連の観測記事が材料視されたこともあり、質問の多くは、当該記事の信ぴょう性を確認するものが多かった。
ポイントは「日銀追加緩和ありや、なしや」に尽きる。
NYから見ると、時系列的に、安倍首相の施政方針演説の後に流された情報ゆえ、様々な憶測が出やすい地合いではあった。
それにしても「日銀の追加緩和は逆効果との見方が日銀内で浮上」との観測記事ひとつが、円相場を米雇用統計並みのインパクトで揺らせたことで、改めてアベノミクスへの評価の揺れが浮き彫りになった。

ヘッジファンドも、円を攻めるにあたり、昨年同様ショート(円売り)先行で行くか、あるいは、ロング(円買い)から入るか、戸惑っていることも強く感じた。
ヘッジファンドの見解が割れていることは、昨年と異なり、短期的には円安・円高双方向に大きく振れる可能性を示唆する。(通年でみれば、依然円安説が多数派だが。)
更に、今年は、産油国政府系ファンドの一部が外為市場で鞘取り売買によるトレーディング収益最大化を目指し動き始めた。原油急落による歳入減の埋め合わせ狙いである。
昨日夕刻に起きた瞬間的な1円50銭以上の動きは、リスク管理が厳しい民間の投資銀行などのポジションではあり得ない。金融当局の介入時に見られるような突発的変動だ。場に出ている円売り注文を根こそぎ「箒で掃くごとく」買いさらってゆく手法ゆえ、スイープ(箒の意)とも呼ばれる。いまどき、ドル円ほど流動性ある市場でスイープを仕掛けられるのは産油国系政府系ファンドくらいしか考えられない、と語るヘッジファンドもいた。しかし、真相は不明だ。
いずれにせよ、円相場が外海の荒波にさらされる市場環境になったことだけはたしかだ。
24時間で1円から2円幅の乱気流に巻き込まれるケースが今後も起きる可能性が強い。
そのボラティリティーにヘッジファンドなど短期投機筋が惹きつけられ、集まってくる。
追加緩和、第三の矢の進捗状況の不透明性が増せば、彼らの収益機会も増えるわけだ。後講釈を通信社に流すことなど彼らの得意技である。

金に関しては、本日日経朝刊商品面に「中央銀行の金購入が2014年477トンに達した。過去で二番目の高水準。」という記事が出ています。ロシアやイラクの公的金購入が目立つ。
更に、2014年の中国の年間金需要は前年比38%減だが、それでも813トン。
インドは14%減で842トン。
金需要が盛り上がらずといわれた2014年でも、この二か国で1655トン、年間金生産量の55%程度を買い占めたことになります。やはり下支え効果は大きいね。但し、買いの値頃感が1200ドルあるいはそれ以下まで下がってきている。ゆえに1200ドル前後は長期的に底値圏という私の見方が裏付けられた感じ。

2015年