豊島逸夫の手帖

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米利上げ見切り発車、要経過観察へ

2015年12月7日


ロケット発射にたとえれば、11月米雇用統計発表後、いよいよ利上げカウントダウン開始。関係者は既に成層圏脱出のための第二弾ロケット点火のタイミングを模索している。

非農業部門新規雇用者数20万人超えは満額回答。

但し、雇用の質といえる、平均時給、労働参加率など構造要因は、そもそも月次で改善が確認されるものではない。利上げを否定するほど悪化は見られず、利上げを積極的に後押しするほどの改善ぶりでもない。ここは、それで良しとすることが、最近のイエレン氏講演・議会証言から読み取れる。

新たな懸念材料もある。ここにきて米国内ホームグロウンテロの事例が勃発したことが強く不安視され、クリスマスシーズンを迎える消費者心理を揺さぶっているからだ。全土が追悼・警戒モードになると、引きこもり心理の顕在化は避けられまい。

ISMも、製造業部門は6年半ぶりの低水準。頼みの非製造業部門は好不況の分かれ目50台は維持しつつも、下落傾向にある。

そこで、16年1~3月期の米国経済が、早くもNY市場では取り沙汰されている。3月に2回目の利上げありやなしや。新年早々の市場は新たな「利上げ問題」を材料視しよう。

傾向としては、3月2回目利上げ無しとの見方に勢い(モメンタム)を感じる。1回利上げして、金利という伝統的金融政策手段を久し振りに取り戻した中央銀行FRBとしては、来年前期1~6月、様子見に徹するとの見通しもある。

2回目の利上げに関しても、イエレン氏はあくまで「データ次第」の基本姿勢を貫く。「経過観察」ゆえ、毎月検査結果を精査して、安定状態が3か月も確認できれば、2回目の決断をするのではなかろうか。いっぽう、ぶり返しの症状が確認されれば、利下げの可能性さえ捨てきれない。特に、テロのような想定外要因が連鎖的に起これば、少なくとも利上げをサポートする経済環境とはいえない。サンバーナディーノ市は、筆者も、前職で元CEOが住んでいたのでNY出張の帰りに訪問したことがある。大都市近郊の静かな住宅街だが、犯罪率は低くなく、その意味で典型的米国の断面を見る思いだった。今回は、まさに米国内のソフトターゲットが狙われたわけだ。スピリチュアルな過激思想という「武器」は、SNSに乗って拡散するので、さすがのFBIも手を焼く。往々にして、「自慢の息子」が、自室に閉じこもり、家族にも知られずテロリスト化してゆく。

このような社会情勢の中で、イエレン氏に一回目の利上げを決断させるのは、一刻も早く「禁じ手」とも言われた非伝統的政策から金融を正常化したいとの中央銀行家の矜持とも思えてくる。

対して、先週、ドラギ氏はECB理事会後NYを訪問。講演後の質疑応答で、早速追加緩和について質問を受け、珍しく若干うろたえ気味に「あ、いえ、うーん、やっぱり、制限はありません!」と答えた。「市場を失望感でお騒がせしたことに対する記者会見」のごとき様相であった。

そこで、考えられる展開は、16年3月前後の時点で、米国はFFレート据え置き。欧州は、ECBによる国債購入増額という追加緩和。

市場の反応は、為替市場でユーロ安・ドル高、株式市場では欧州株買いが予想される。

米国ヘッジファンドや年金の国際分散運用において、欧州株と日本株は常にライバル関係にあるので、ISテロ米国へ飛び火の今後の展開には注視が必要だ。

なお、日銀の追加緩和については、日本国内以上に「期待感」が強い。もし、日銀とECBの追加緩和競争の如き様相にでもなれば、マネーは太平洋・大西洋を渡り拡散してゆくことになろう。

そして、金プラチナは、米雇用統計の良い数字で利上げに関するモヤモヤ感が晴れ、NYでのドラギさんが、ECB追加緩和を示唆したことで、急騰。1080ドル台と880ドル台。30ドル以上上がり、しかも円安に振れたので、円建てでは100円前後の急上昇に。

まぁ、ショートカバーなれど、さすがに金プラチナともに下げ過ぎの反動だね。当然だ。

さて、今日の写真は、イタリアン忘年会。

シンプルなトマトソースの手打ちパスタ。

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イタリアの豆スープ。

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プックリ牡蠣の手打ちパスタ。

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真鯛のグリル。

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最近、コンプライアンスが厳しくなった大企業では、人目を気遣い、職場の忘年会も、できるだけ「山手線の外」で、人目につかないところでやることが多い。貸切だと、気兼ねなく、喋れる(笑)。 しかし、そこまでコンプラも来たかね。

2015年