豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 円・日本株を狙うオイルマネー
Page1767

円・日本株を狙うオイルマネー

2015年1月21日

原油価格下落が顕在化し始めた昨年10月。ウォール街の大手投資銀行に働く旧知のディーラーが、トレーディング部門縮小のあおりで解雇され、中東産油国政府系ファンドにリクルートされた。
「実はヘッジファンドからもお誘いがあったが、年金基金のヘッジファンド外しでキビシイ。だから、中東系を選んだ。家族はイスラム戒律の厳しい中東暮らしをいやがるので、単身赴任の出稼ぎさ。3年働けば、あと一生、楽に暮らせるから。」
ただでさえウォール街のトレーダーは高給取りだが、それよりケタが一つ多い額が提示された様子だ。
ドッドフランク法でがんじがらめに規制されていた職場から、コンプライアンスやポジション規制からは無縁の世界で働くことで、
高揚感に溢れていた。
しばらくして、欧米経済紙も、中東系政府系ファンドの「トレーダー・ハンティング」を報じ始めた。

その後、NYでヘッジファンドの会合にて講演したときは、大手銀行ジュネーブ支店に勤務していた後輩から、しきりにアベノミクスや日本株について聞かれた。スイスのフランス語圏にあるジュネーブは、中東と密接な政治・経済関係を持つことで知られる。
オイルマネーの日本株への視線を感じた。
但し、アベノミクス悲観論に基づく質問が多く、原油急落によるオイルマネー資産圧縮リストに日本株が載っていることを垣間見た思いだった。
そこで、12月15日付日経コラムに「衆院選で動くのは海外オイルマネー」と書いた。
冒頭の友人とは、その後一回チャットしたが、現地人ボスが独裁的権限を持っているので、やりにくそうな語り口であった。
産油国政府系ファンドといっても、1500人近くの「ガイジン助っ人部隊」をかかえるアブダビ投資庁から、50名ほどの「少数精鋭部隊」で動くカタール・ホールディングスまで、多様化している。クエート投資庁は500人ほどの組織だが、北京やロンドンに出先機関を持つ。
アブダビ投資庁は、かなり荒っぽいトレーディングで相場を荒らすが、カタール投資庁は、さながらブラックストーンのような投資ファンド運用会社を思わせる組織だ。ロンドンのシンボル的百貨店ハロッズを買収するなどの派手な動きは、ジャパン・マネーのロックフェラーセンター買収を想起させ話題になった。フォルクスワーゲンのポルシェ完全子会社化のときには、クレディ―スイスがアドバイザリー役で、カタール・ホールディングスが舞台裏で動いた。ザ・ドクターの異名を持つカタール側のトップが、ポルシェの大ファンで、メルケル首相を根回し訪問したこともエピソードとして残っている。
しかし、そのオイルマネーも原油急落とともに撤退モードに入っている。
株式のみならずインフラ・不動産関連の売却も今後顕在化しそうだ。

いっぽう、容赦ないユーロ売りの影には産油国の政府系ファンドの影がちらつく。
ECB理事会での国債購入型量的緩和導入とギリシャ危機を材料に、民間金融機関では取りえない規模のポジションを駆使して売り攻勢をかける。
そこに、これまたサバイバルをかけたヘッジファンドも参戦している。
生き残りのために必死のオイルマネーとヘッジファンドは、ポジションが売りと買いに分かれると、相場の変動を増幅させる。ポジションが同じ売りか買いか同じサイドになると、急騰あるいは急落が更に加速する。
1月の標的はユーロであったが、2月には円が狙われる可能性もあろう。外為市場のポジションが円安派と円高派に分かれているので、投機マネーが揺さぶりをかければ動かしやすい地合いだ。オイルマネーとヘッジファンドが円売り・円買いでがっぷり組み合うシーンが示現するかもしれない。
日本株については、日経平均先物が、ヘッジファンドとオイルマネーの空中戦の場と化す場面もありそうだ。
原油価格が更に下がれば、長期投資型の産油国政府系ファンドによる日本株売却も視野に入る。
2015年、世界のマネーの動きを読むにあたり、この二つの「ゴジラ」から目が離せない。

金は1290ドル台近くまで続騰。プラチナも1270ドル台。
注目すべきは、外為市場で円安(ドル高)にも関わらず、海外のドル建て金価格も上がっていること。
結果的に円建て価格は急騰!
円安と海外金高が同時発生は、そうそうある局面ではないから、割高感があるので、売りたいひとにとってはチャンス。
趨勢としては、ECB量的緩和とギリシャ危機を織り込み、中国経済成長率が年間7.4%をかろうじて維持したことで更なる買いが入り、あとは22日ECB理事会と25日ギリシャ総選挙待ち。金に関しては充分上がった感じ。

今晩、日銀政策決定会合を受けて、30分生出演の日経CNBCニュースコアワイドの告知はこちらの動くバナーの中に。

www.nikkei-cnbc.co.jp

さすがに、大雪のスキー場で遭難して生出演間に合わずでは洒落にならないので、今日はガーラ湯沢ピーカンなのに(悔しい 笑)。
午前半日スキー行かず、おとなしく東京に居ます。

今日の写真は「濃い」抹茶ソフト食べながら見た、「茶の十徳」@京都。

2037.jpg抹茶アイスは「濃い」のが好みだけど、なかなか見つからないもの。

2015年