豊島逸夫の手帖

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4つのリスク共振で世界同時株安の様相

2015年8月21日

NY株急落で、世界同時株安が、いよいよ切迫感を増してきた。

NYのトレーダーたちが、夏休みを予定より早く切り上げ、ぼやきながら職場に戻る準備を始めている。

夏の流動性が薄い状態での激しい価格変動は、季節要因として慣れている。しかし、今回ばかりは、一過性とは片付けられない深刻な状況なのだ。

4つのリスクが複合化して、市場を揺らせているからだ。

―FOMC議事録があらわにした米利上げ時期の不確実性

―中国発新興国危機再来の可能性

―世界経済減速を映す原油・銅価格急落

―チプラス首相辞任が映すギリシャ債務問題再燃の兆し

現象面では、原油急落のさなか、金利を生まない金が、利上げ前に急騰を続けている。1080ドル台まで下げ続けた金価格が、アッというまに1150ドル台まで買い戻された。久しく見られなかった上げっぷりだ。逃避マネーによる買いが激増していることの証といえる。

もう一つの安全資産、米国債にもマネー流入が加速中だ。米10年債利回りは、FOMC議事録発表前の2.2%台から2.06%前後にまで急落。2%割れも視野に入る。

最近影が薄かった逃避通貨としての円も、NY株の容易ならぬ下げを見て息を吹き返し、123円前半まで円高が進行している。

ここで、4つのリスクを見る勘所を押さえておこう。

―利上げ時期に関しては8月雇用統計が9月利上げに向けた最後のビッグ・イベントとなろう。

―中国・新興国に関しては、米利上げ観測と人民元安・新興国通貨安が誘発する資本流出の規模。

―原油急落に関しては、業界内M&Aによる統合の動き。顕在化すれば生産減少につながる。

―ギリシャ情勢は、消費増税・年金カット・農民優遇税制撤廃への国民の反発を、新チプラス政権が、どこまで抑えられるか。

以上4つのリスクの根は深い。

日本への影響としては、まず、ドル円の膠着相場がブレークされ、121円程度の円高が視野に入る。米利上げ観測による円安より、世界同時株安による円高のほうが優る地合いだ。日本株は外国人買いも細り、調整局面入りで耐える時期を迎えそうだ。今回は日経平均19000円を割り込むケースも考えられる。

今日の写真

いただきものの、畳縁バッグ。畳のヘリで作ってあるので、軽くて丈夫。いま、はやっているね。夏にタブレットなどキャリーするのに便利。


そして、パレスホテルで食べたケーキ。


夜、新宿で食べた鮨。


食欲の一日でした(笑)。

それから、朝日新聞の対談を、江連裕子経済キャスター兼社外取締役とやりました。来週あたりに掲載されるのかな。

2015年