豊島逸夫の手帖

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「9月リスク」に身構える市場

2015年7月7日

米利上げ、ギリシャのユーロ離脱、上海株乱高下に発する中国経済迷走。9月に、この三つのリスクが共振現象を引き起こす可能性が浮上してきた。

「セプテンバー・リスク」

最近、NYのヘッジファンドと話していると、時折、話題になる単語だ。

まず、米利上げだが、9月FOMCで決まっても、先送りされても、どちらも「サプライズ」要因になる。それほど、市場内の見方が分かれているということだ。FOMCメンバーの政策金利予測分布を示す「ドット・チャート」を見ても、年内利上げ1回・2回・3回予測それぞれ5名ずつと割れている。6月米雇用統計ひとつとっても、総じて改善傾向にあるが、賃金・前月下方修正など不透明要因も目立ち、総合的判定が悩ましい。

8月の恒例行事「ジャクソンホール中央銀行会議」に今年はイエレン議長が欠席することも、市場にとっては気がかりだ。通年であれば、その会議での発言が、9月FOMCに向けての「予告編」とされ、市場のコンセンサスが醸成されてきた。ところが、今年は「ぶっつけ本番」となりそうな雲行きだ。

次に、ギリシャ危機。

ECB(欧州中央銀行)保有のギリシャ国債償還日が7月20日(約35億ユーロ)8月20日(約32億ユーロ)と控えている。国民投票後、これから債権団とギリシャの間で、ふりだしに戻り、交渉が開始されても、この償還日に間に合うように合意できるか。かなり困難、というより、ほぼ不可能に近いのではないか。ギリシャ財務相が変わっても、債権団の不信感は容易に払拭できないほど、感情的な溝が深まってしまった。交渉が平行線をたどりつつ、ECBからの緊急流動性支援(ELA)も増額されず、ギリシャ国内のユーロは枯渇してゆく。7月20日にも国債デフォルトに陥る確率は高い。しかし、デフォルトがただちにユーロ離脱となるわけではない。そもそも、現行の取り決めではユーロ参加国が脱退する事態が想定されていないので、手続きそのものが手さぐりの模索となる。9月には、その行く末が見えてくるかもしれない。

ギリシャ危機が原油急落を誘発していることも不気味だ。

そして、中国リスク。

一連の株価下支え策は、はからずも、中国株式市場の脆弱性をあらわにしてしまった。さすがの習主席も、ネズミの大群と化した中国人個人投資家集団のランダム(予測不可能)な動きを持て余している。

しかも、株急落のタイミングが悪い。

ときあたかも、地方政府や国営企業がかかえる膨大な借金にメスを入れ、病巣を除去すると言う痛みを伴う手術が始まっている。できれば、株価上昇という、鎮痛剤が欲しいところだ。それが、上海株バブル崩壊ともなれば、手術は益々困難になる。

国内消費主導型経済への移行を目指す戦略の中でも、株価下落にともなう負の資産効果はなんとしても避けたいところだ。

しかも、9月末のIMF総会では、SDRというIMF内の決済に使われる合成通貨の中に、人民元を第五の通貨として組み込む事案が議論されることを目論んでいる。米ドル・ユーロ・円・ポンドと同様な国際通貨としての認定を受けるには、資本取引自由化が欠かせない。しかし、株式市場に欧米ヘッジファンドが空売りを含め本格参入すれば、ボラティリティーの更なる激化は必至だ。

9月には人民元自由化、中国経済構造改革の真価が問われる状況が考えられる。市場では、中国経済軟着陸期待とハードランディング懸念が交錯しよう。

日本株と円も、このセプテンバー・リスクから無縁というわけにはゆかぬ。三つの変数からなる連立方程式の解を求めることは至難の業だ。ドラギECB総裁は「市場はボラティティーに慣れるべし。」と説いた。投資家のリスク耐性が試される9月になりそうだ。

そして、プラチナが1060ドル台まで下げた。200日移動平均線から大きく乖離。株やってる人なら、そそられる罫線のカタチになってる。わたしの周りでも、買い下がり始めた人が増えてる。

今週土曜日も、またまた、ABC朝日放送生出演。殆ど、掛け合い漫才だと言われてるけど()、たしかに、こっちも楽しんでやってるからね。最近は、週末は大阪でテレビ、という感じ。

先週OAのyou tubeはココ↓

https://www.youtube.com/watch?v=jQqpro_cxnk

涼しければ、京都でゴルフする気になるけど、祇園祭の蒸し暑さの中だからね~。

2015年