豊島逸夫の手帖

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相次ぐ利上げ先送り論

2015年9月15日

ヘッジファンド界の大物ダリオ氏が、顧客向けレターで「中国波乱などにより、FRBの次の一手は引き締めではなく、量的緩和となろう。」と書いている。

CMEのFEDウォッチと呼ばれるFFレート先物から算出された利上げ時期確率を見ても、最新のデータでは、9月利上げの確率が23%まで下がってきた。時系列でみると、10月39%、12月58%、16年1月65%、同3月76%となっている。10月から3月の間に利上げとの見方が着実に増えている。更に、16年4月以降の確率も1/4ほど残っているのだ。

国際機関でも、IMFに続き世界銀行まで、FRB利上げは先送りせよ、との見解を明らかにしている。

そして、金融界の大御所ローレンス・サマーズ氏は「0.25%の利上げなら、経済に対して大きな影響はない、というなら、利上げしても、しなくても大きな変わりはないということか。0.25%利上げは影響少なく、ゼロ金利脱出は極めて重要との意見を聞くと、頭がクラクラする。」と述べている。金融節度を重んじる中央銀行の発想なら、ゼロ金利という非伝統的金融政策の正常化が重要ということになる。元財務長官らしいサマーズ氏の言い回しだ。

更に同氏は「利上げしないリスクは、インフレがゼロ・コンマ数パーセント程度想定より上振れする程度。対して、利上げするリスクは、破壊的な経済危機の可能性を含む。実際、1998年のロシア・デフォルト、サブプライム危機、アジア経済危機は、想定されていたより大きな金融変調により生じている。」と論じる。煽り気味ともとられかねない表現だが、大御所の発言ゆえ、市場には響く。

大手投資銀行のレポートでは9月説が未だ残るが、メインシナリオとリスクシナリオに分けて論じるなど、ヘッジをかけている感は否めない。

マーケットの現場でも、NYの最前線では、今週利上げで市場が大混乱という危惧はもはや極めて薄い。野次馬たちがノイズレベルを上げているだけだ。

既に、世界連鎖株安の洗礼を受けたあとなので、ボラティリティーに対する耐性がついてきたように思える。

貴金属市場も依然FOMC待ちモード。

2015年