豊島逸夫の手帖

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株と金の買い時は?

2015年4月23日

2万円を超えて永遠に上げ続けると考えている人はいない。

個人投資家が今、一番、知りたがっていることは、下げがいつ来るのか?売り時はいつか?買いそびれた人は、いつ買ったらいいのか。

筆者は長期投資派なので、調整局面に入っても、ばたつくな、と説くが、投資家心理はデリケートなもの。やはり、目の前でドカンと下げられると、ココロは揺れる。もう、株なんて売って、楽になりたい、という心理になりがちだ。

そこで、2万円超え後の下値の目途について考えてみたい。これ、最近の投資セミナーでも、頻繁に受ける質問だ。どこまで上がるか、より、下がるとすればどこまで、が気になるようである。

そこで、下げのキッカケを考えると、やはり海外マネー動向。東京市場の株売買の7割が外人投資家という構図は変わらないからだ。

GPIFやNISAの長期マネーが入っても、レバレッジを効かせたヘッジファンドの売りが集中すると、短期的に価格の急落は不可避だ。

具体的に想定されるケースとしては、市場が期待する4月日銀追加緩和がなかった場合だろう。その場合、ミクロの企業業績に関わらず、ヘッジファンドが例の「5月は売り」攻勢をかけてくる公算大である。

まず、彼らの多くが、5月に決算期を迎えるので、買いポジションの手仕舞いが出やすい。

かつ、ギリシャの債務危機も5月11日がXデーである。これについては、20日付け本欄「ギリシャ、Xデーは5月11日か」を参照されたい。

中国株爆上げも、中国のゴールデンウィークまで持つか。プロでも読み切れない動きをする巨大初心者個人投資家集団による買いなので、さすがのヘッジファンドももてあまし気味だ。そもそも、減速中の中国経済に投入された緩和マネーが株価の更なる上昇期待を生むという現象を、健全とは言い難い。なお、中国経済については、21日本欄「中国株波乱の影響と日本への警鐘」に詳述した。

そして、4月の雇用統計次第で、米利上げ開始時期が再び揺れる可能性がある。足元では、3月新規雇用者増の激減により、利上げ後ずれ説が台頭しているが、4月の数字次第で、後ずれが一転前倒し観測に振れるリスクをはらむ。たとえば、失業保険申請者数を見れば趨勢的に減少傾向にあるのだ。インフレ期待の低下についても、原油価格はやや持ち直し気味である。米国がいよいよ引き締めに向かえば、世界的緩和ストーリーに水が差される。

以上、リスクばかり書いてきたが、基本的にこれまで繰り返し書いてきたように、欧米機関投資家は「2万円は通過点」と見ている。つまり、当面は買い続行が予想される。

但し、長期マネーの欧米年金は、運用方針決定に時間を要する。足元では、やはり、ヘッジファンドの動きが焦点。3~4月に買って、5月にはいったん手仕舞うことにより、日経平均が瞬間タッチで1万8千円程度まで下落する可能性は覚悟しておくべきであろう。とはいえ、日本の年金あるいは公的マネーの買いによる下支えで底割れは考えにくい。

ここまで書いてきたことは、格別目新しい話ではない。問題は、頭で理解していても、いざ、「日経平均急落」の見出しが躍るような状況に冷静に対処できるか、に尽きる。

かくいう筆者でも、買った株が下がれば、心中穏やかではない。悟りなど開けるものではない。ただ、プロとしてリスク耐性だけは鍛えられている。

さて、それで結論だが、胆力に自信がなければ、2万円超えの株に手を出さないほうがいい。あれこれ投資について悩むより、人生を豊かにすることのほうが、はるかに重要だ。いっぽう、株式投資経験者であれば、5月に下がれば買い増すくらいのスタンスで良いと思う。買い場探しの海外長期マネーも、その下げを狙っている。年後半は、その欧米年金マネーや政府系ファンドなどビッグマネーの本格参戦も見込めるので2万2千円程度の上値を試しに動くだろう。ただし、乱気流に備えて、シートベルトはきつく締めておく心理的準備は欠かせない。

金価格は1180ドル台まで下がった。

1150ドル台になれば、買い時と見る。但し、その時は、円高に振れていると思うので、円建て金価格は下げにくい。

胆力に自信のない人は、毎月コツコツ買い増してゆくことを薦める。

本稿は羽田国際ターミナルのラウンジで書いた。

アテネ・フランクフルトから原稿を送る。

ツイッタ―で写真なども貼る予定。@jefftoshima

では、行ってきます!

2015年