豊島逸夫の手帖

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円相場大荒れ、116円台も

2015年1月15日

円相場は先週米雇用統計発表前には120円に迫る円安であったが、昨日は、米国小売統計急減で一時116円20銭前後まで円高に振れる局面があった。
この間、短時間で1円程度は頻繁に上下変動する荒い展開だが、目先のトレンドは明らかに円高だ。
その要因は、ギリシャ危機再燃・原油安による産油国経済不安(含むロシア)・フランステロ事件などが誘発した逃避通貨としての円買いだ。
株安もリスクオフの円買いを助長した。
いっぽう、ユーロ安が加速中だ。昨日は欧州司法裁判所がECB国債買い取りを「合法」との見解を明らかにしたことで、法律的な欧州国債購入型量的緩和への阻害要因が薄まった。ドル・ユーロのレートも、1.17台という記録的なユーロ安になっている。ユーロ円も138円前後まで下がってきた。
従って、対ユーロではドル高が強まっている。
主要3通貨の外為不等式で見れば、円>ドル>ユーロとなり、円が最強通貨となった。

なお、ユーロ安と円高の関係だが、ECB量的緩和を材料とするユーロ安・ドル高であれば、対円にもドル高が及ぶ。しかし、ギリシャ不安を懸念するユーロ不安となると、安全性を求めるマネーが円に流入して、対円ではドル安に振れやすい。今回は金価格も1230ドル台まで上昇。米10年債利回りも1.8%まで下落しているので、後者のケースといえよう。

なお、昨日は夕方に116円台に、そして円高第二波がNY市場寄り付きで生じた。12月小売売上が0.9%減(事前予測0.1%減)を大きく下振れたからだ。世界銀行のレポートで「世界経済の唯一のエンジン」と書かれた国ゆえ、そのショック効果は大きく、米株価も一時は300ドルを超す急落を演じた。円相場も116円80銭から116円20銭前後まで瞬間的に円高に振れた。「小売データ悪化」のキーワードが引き金となり、アルゴリズム取引の円買いが発動されたのだ。
雇用統計では時給が下がり、小売り統計ではクリスマス商戦も不発に終わったことが示された。更に昨日発表のベージュブックでも、「原油安にもかかわらず消費者購買はmodest=慎重」と表現された。
その結果、米フェデラルファンド先物レート(政策金利の先物取引)は2015年12月限で0.41%まで下がっている。これは、FOMC参加者が予測する1.125%(平均値)とかなり乖離している。このFRB予測は昨年12月時点ゆえ、いずれ下方修正は避けられまい。
そうなると、FRB利上げ時期も、当然、後ずれする。
これはベースシナリオの変更を意味する。
欧米の機関投資家の多くは「2015年は利上げの年」ゆえドル買い・ユーロ売り・円売りのポジションをとっていたのだ。
120円から116円への過程で、このポジションはかなり手仕舞われたと見られる。

リスクオフの金買いは、やや息切れ。一方、ややドル安に振れたので、金買い材料もある。
興味深いのは金もプラチナも1230ドル台で、ほぼ同水準にあること。ここは、やはり、プラチナに割安感がある。

さて、今日の写真は、京都で食したもの。もちろん、らく山。
まず、白みそ仕立てのお雑煮。エビイモ入り。

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2015年