2015年6月19日
6月FOMC後、市場は、利上げ後ずれと読み、「執行猶予3か月」を前提に、金そしてNY株は上昇した。利上げ開始時期12月説が、9月説より優勢になっている。
振り返ってみれば、市場はFOMC前から12月の確率が最も高いと読んでいた。CMEのFFレート先物相場から算出され、HP上で公開されている「利上げ確率」によれば、FOMC前に、9月28%、12月68%、2016年1月65%となっていたのだ。
それが、18日終了時点では、9月17%、12月56%、2016年1月71%となり、2016年1月の確率が最も高くなっている。
市場は、ハト派イエレン議長の利上げ決定諸条件(いわゆるイエレン・ダッシュボード)を全て満たすほどマクロ経済指標が全面的かつ持続的に改善されるには、まだ時間を要すると見ているわけだ。
このような市場環境で、かりに、9月FOMCで利上げが決定されたら、市場は混乱するであろう。昨晩、NY市場関係者たちとの会話では、「9月リスクにご用心」という表現が印象に残った。
大手金融機関の利上げ予測では、依然、9月説も根強く残っているからだ。
市場混乱の震源地としては、まず債券市場が考えられる。米国債利回りが急騰して、外為市場に飛び火。ドル高(円安)が急進行するシナリオだ。NY株は売られるだろうが、日本株には円安要因も働くであろう。金も振られて乱高下しよう。
そして、もう一つの金上昇要因のギリシャ。
18日、NY市場が後場に入り、「ギリシャの民間銀行が来週月曜日にオープンできるか定かでない。」とのECB高官発言が通信社経由で流れた。ECBはコメントせず。
たしかに、ギリシャ国内での預金引き出しは今週に入り加速しており、その総額は、30日返済期限のIMF融資額(15億ドル)を上回る規模に達する。
キプロス型預金封鎖がギリシャでも実施される可能性を危惧した市民たちは、資本規制に対して自衛措置に動いているのだ。
ギリシャ国会前のシンタグマ広場では、17日には、現政権支持、緊縮絶対反対集会が開かれ、18日には、債権団との交渉でユーロ離脱回避すべしとの集会が開かれた。民意も真っ二つに割れている。
筆者のアテネの友人たちは「いったい、どうなっているのか、どうなるのか、さっぱり分からない。」と、とにかく当惑している。
いっぽう、IMFのラガルド専務理事は、「大人の会話ができる相手と話したい。」「返済がなければ、7月1日にデフォルトになる。」と明言している。
サッカーにたとえれば、ロスタイムもそろそろ時間切れで、ゲームオーバーが近い。
では、市場への影響として、米利上げ後ずれとギリシャ危機と、どちらが強いかといえば、NY市場では前者のほうが優ることが18日には実証された。しかし、かりにデフォルト・ユーロ離脱になれば、
短期的に、ギリシャ要因(リスクオフ)が優ると思われる。
中期的な視点でみれば、ドル金利上昇の問題のほうが、広範囲かつ持続的な影響をジワリ与えることになりそうだ。