豊島逸夫の手帖

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米利上げはノロノロ運転か

2015年4月8日

米雇用統計発表後、利上げが9月、年末、更に来年との観測が浮上している。

筆者は本欄2014年12月18日付け「FOMCに潜む金利の罠」で「利上げは2016年」の可能性を論じた。

しかし、雇用統計後の米地区連銀総裁たちの講演を聞くと、「とりあえず年後半に一回は利上げ。あとはストップ&ゴー。」というシナリオに現実味を感じている。「利上げ後、景況感が悪化すれば、利上げ一時停止もありうる。」という趣旨の発言が複数回聞かれたからだ。

ストップ&ゴー。渋滞で少し進んでは止まるイメージである。

まずは、雇用統計下振れサプライズ後の展開を振り返ってみたい。

米新規雇用者増が半減して、株が買われた。理由は、利上げの後ずれ観測。

なんとも都合良い解釈だが、これは、あくまでヘッジファンドなど投機筋の買いの後講釈。

年金など長期マネーの運用配分計画は、利上げ開始時期が3ヶ月程度遅れても、変わらない。それより、今後の利上げの軌跡に注目する。2017年にFFレートは、どの程度の水準に収まっているか。

この点については、最新のキーワードは、「浅い=shallow」。

イエレンFRB議長もフィッシャー副議長もダドリーNY連銀総裁も使っているので、「忍耐強く」に代わる用語になるかもしれない。

浅い利上げの軌跡とは、なにか。

雇用統計後、初のFOMCメンバー発言として注目された6日のダドリー氏講演では、ずばり「インフレ率2%として2017年のFFレートは3.5%。」と語られている。過去の利上げの歴史を辿れば、3%台は、利上げ開始時点の水準ともいえるレベルだ。

「3月の雇用統計は、1~3月期のGDPが年率1%程度と弱いことを示す。」とも述べ、「2014年半ばからのドル15%程度上昇が、今年の実質GDP成長率を0.6%ほど引き下げる。」ことに言及した。

いっぽうで、同氏は「今年後半には失業率が5%まで下落。実質賃金上昇が見込まれる。」と予測。年内には利上げの経済環境醸成を示唆している。

同氏の講演はズバリ予測値を出すので分かりやすく、市場に安心感を与える。

そして、7日には、コチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁が「We can do betterもっと良くできる。」と選挙演説のようなタイトルの講演を、北ダコタ州の商工会議所で行った。同州はシェール生産の中心地で、原油安による失業者増が顕著ゆえ、励ましのタイトルなのだろう。

講演では、「米国の労働市場は、もっと良くできる。リーマンショック前の水準に戻すことは可能だ。2014年の労働市場改善ペースが3年続けば、2006年の水準に戻るだろう。ゆえに、金融政策の緩和解除は極めて忍耐強く行うべきだ。」とした。

そのうえで、グラフ・スライドを9枚も使い詳細に説明したうえで、「利上げは2016年後半まで延ばすべし。2017年のFFレートは2%程度が適当。2015年に利上げは間違い。」とまで断じている。

同氏は、投票権のないFOMCメンバーゆえ、自由に発言することで知られる人物なので、市場は軽くスル―した感はある。

とはいえ、タカ派の両巨匠(ダラス連銀フィッシャー総裁とフィラデルフィア連銀プロッサー総裁)が抜けた今年のFOMCメンバーから、タカ派的講演はなかなか聞こえてこない。

ハト派のイエレン色に染まった感は否めない。

とはいえ、イエレン氏とて、中央銀行家。金融節度は守らねばならない。バブルのリスクをはらむ「ゼロ金利」という異常な金融政策を正常化したいのはやまやまであろう。そこで、まずは利上げに踏み切り、あとは、成長重視のスタンスを堅持する。景況感が悪化すれば、利上げは「一回休み」。

ノロノロ運転の利上げが、物価と成長のデュアル・マンデート(二つの政策目標)を満たす最も現実的な選択に思える。

外為市場では円安となり120円台。

しかし、今朝発表の2月経常収支は1兆4401億円黒字。3年5月ぶりの黒字幅、高水準。ジワリ円高構造も顕在化しつつある。

円高で115円、円安で125円が年末までの予想レンジ。

金価格は1210ドル前後。急騰後、じり安。為替が120円台なので高値圏だね。

プラチナが1170ドル台で、じわじわ、金プラチナ値差が縮小中。

さて、京都から筍が届きました!

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今年は、急に暖かくなって、一気に成長したらしい。

けれど、今朝の東京は雪模様。

まったく、相場みたいな天気だね。

京都の筍は、一味違う。産地直送。これで2~3日は筍ざんまい。煮たり、筍ご飯にしたり、筍パスタもゆける。

山椒をちょっぴりきかせてね。

2015年