2015年9月2日
月が変わったところで、筆者の想定を上回るスピードで世界株安連鎖第二ラウンドが加速している。
8月31日付け「ギリシャのおじさん」に、先週の世界株安は予告編で、9月が本編と書いた。そして日経平均1万7000円、ドル円110円を予測したとき、「9月中にも」という想定であった。
31日の時点では、かなり大胆な予測と言われた。
それが、早くも現実味を帯びてきた。
アルゴリズム高速度取引が席巻する市場の価格変動は、これまでの市場の常識を変えている。先週はダウ平均がいきなり1000ドルも急落、円相場が116円まで瞬間的に突入、そして、今週は原油先物相場が、31日、1日と一日で10%程度の乱高下。株式市場、為替市場、商品市場、すべてにわたり、相場の「突風被害」を受けている。
円相場については、121円台から116円台まで、短時間で円高が示現する市場ゆえ、例えば118円台から112円台への瞬間的円高が起こっても不思議はない。但し、それは、あくまで、瞬間タッチの数値である。この現象を筆者は「円高の落とし穴」と呼び、2015年相場予測でも、その可能性をV字型の短期円高局面としてグラフ化して示してきた。その時点での、想定リスクはギリシャと中国であった。
しかし、ギリシャが、一時的に落ち着き、9月リスクは、中国と米国になった。
そこで、よく聞かれることが、中国と米国、あるいは、FRBと中国人民銀行、どちらの影響が強いのか、との質問だ。筆者に言わせれば、「どちらが」ではなく、中国人民銀行が相次ぎ追加緩和策を打ち出しているときに、米国は利上げを議論している、という金融政策の非対称性が問題なのだ。当然、ドル高・人民元安になりやすい地合いだが、人民元安が進行すると、中国からの資本逃避が加速という合併症を生む。かといって、人民元高に誘導すれば、頼りの輸出が今以上に減ってしまう。しかも、指導部は、北戴河の長老会議で、7%成長死守を言い渡されている。
この経済政策のジレンマをかかえ、中国指導部は、海図なき未知の海域の航海に乗り出した。
そして、上海株については、買い支え策はあきらめ、「中国発世界株安」などと書いた人物の摘発に乗り出し、インサイダー事件にも厳しい調査の手を広げた。魔女狩りの様相だが、習主席の力による支配も、相場には通用しない。米利上げをはじめ、海外要因がからむからだ。更に、国内では、迷える羊の群れと化した個人投資家集団の株投資損失から生じる自殺などの社会不安をいかに抑え込むか、という難問も対応策が見えない。これが、いわゆるチャイナ・リスクの実相だ。
いっぽう、米国では、過去10年ちかくゼロ金利が続いたので、いま市場の最前線にいるトレーダーの多くは、利上げを知らない世代だ。自己勘定で高金利通貨・商品などに投資するにあたり、資金コストはタダ同然で当たり前という状況に慣れきってしまった。そこに、いきなり、資金コストが0.25%にアップするという大きなハンディを背負う羽目になった。低金利時代に0.25%は重い。リスク資産への投資は、縮小が不可避だ。これがリスクオフの正体である。
そこで、当面は安全資産で流動性も豊富な米国債市場へのマネー逃避、あるいは待機状態が続きそうだ。更に、ユーロと円が安全通貨の座を争う構図だ。ユーロ高、円高、ドル安に振れやすい。
しかし、いざ、利上げとなれば、債券は売られる。米国債に長居はできない。マネー迷走は続く。
更に、リスク管理が厳格化された市場では、自己勘定売買も縮小され、マーケットの流動性減少が顕著だ。
ここにも、株・為替・債券のボラティリティーが高まる要因がある。
個人投資家の立場では、長期投資に徹するといっても、相次ぐ乱高下を見せつけられると心臓に悪い。
そして、機関投資家・個人投資家が、同時にリスク資産から撤退モードに入ったとき、市場はヘッジファンドの草刈り場と化す。
少なくとも、9月16、17日のFOMCまでは、この状況が続きそうだ。その過程で、瞬間的に相場が想定外の振れを演じることも複数回あろう。それは「異常値」と割り切り、「休むも相場」とばかりに時間という最大の武器を使うべきだろう。休めないのはヘッジファンドだけだ。
最近、金の取材が増えているけど、相変わらず、金は「儲ける」のではなく「貯める」もの。長期的に今は底値圏。2020年、7000円。短期的には、弱気。「君さぁ、ツタンカーメンの時代から2000年、3000年価値を維持している金が、今後10年、20年、価値がなくなるなんて、考えられる?」というような感じでコメントしてる。
そして、今日は、反省の意味で、年初のドル・日経平均予測グラフを添付したよ。日経CNBC出演時の予測。
それから、写真は、まず、山梨から送られてきた、キレイな葡萄。
そして、昨日、食べた、チョコレート・ムース。今、大手町界隈で一番人気のホテル・アマン、33階のレストランで。