豊島逸夫の手帖

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英国、中国製原発など7兆円契約の衝撃

2015年10月22日

英国訪問中の習近平中国国家主席が提示した7兆円の誘惑に、英国が屈した。

サイバー攻撃・人権問題などくさいものには蓋をして、英中関係強化を優先させたのだ。南シナ海問題も、英国から見れば、所詮「対岸の火事」。切迫感に欠ける。

欧州の中で、英国は対中国との経済関係構築に遅れをとっていたという焦りもあるのかもしれない。

既に、中国主導のアジアインフラ開発銀行(AIIB)には、西側から最も早く参加を表明。

中国が目指す人民元を国際通貨としての認知についても、いち早く理解を示していた。

明らかに、米国のスタンスと一線を画す動きだ。

訪米時の習主席のひきつった笑顔と、今回訪英時の満面の笑みとの差が鮮明である。

それにしても、国内原発開発を中国主導で進めるとは、思い切った決断だ。「マネー・イズ・マネーmoney is money」という英国人ならではのドライな割り切りが透ける。

一方、中国側は日米主導のTPPの流れから取り残されたという焦りがある。

一帯一路(新シルクロード構想)の終着駅がアテネからロンドンに伸びたことも大きな成果だろう。


今回の英中接近は、後世の歴史に残る動きの出発点になる可能性をひめる。

EU内の独仏が、どうでるのか。その反応も興味深い。

日本にとっても、日本の技術・インフラ輸出で稼ぐという経済構想に対して、強力なライバル国が力をつけてきたことは脅威だ。

既に、インドネシアの高速鉄道建設は、中国にさらわれてしまった。

「日米」対「英中」競争の構図も視野に入るので、他人事ではない。

2015年