2015年7月28日
さすがの習主席も、個人投資家の烏合の衆が群れる相場の扱いを持て余している。
次々に繰り出す株価下支え策の限界が露呈されつつある。
現在の上海株式市場を、もはや「市場」とは言い難い。
株主の売りに規制をかけ、買いは巨額の官製マネー。しかも上場企業は、自社株売買停止を申告・実行できる。IPOもままならぬ。
株価指数が4500ポイントに達するまで、証券21社が買い支えるという「数値目標」なども聞いたことがない事例だ。
上海株は、よく官製カジノと揶揄されるが、カジノであれば、負けが込めば清算して退出できる。それが、この上海カジノは、出口を塞がれている。
一日の値幅制限が上下10%と定められているので、昨日は、上場企業のほぼ60%にあたる1800社ほどが、売買停止となった。
逃げそびれた個人投資家たちの潜在的売りエネルギーが市場には充満している。
しかも、社会主義国家の救済に慣れた国民の多くは、投資の損は国が補償してくれると信じきってきた。なかには、国を訴えるというプラカードを掲げる投資家もいるほどだ。
今回の再急落に際しても、いずれ追加的救済措置が講じられるとの期待が残る。マーケットは「救済策依存症」の症状を呈しつつある。
問題は、その救済策が永遠には続かないこと。
早晩、出口戦略を模索することになる。昨日の市場は、その可能性を怖れた。日本流にいえば「飛ぶ鳥の羽音」にパニック化する過程といえようか。
そして、中国株騒乱が世界の市場に負の連鎖を及ぼしつつある。
中国経済減速がハードランディングとなる懸念。
特に、中国発国際商品価格急落が、今回は市場の危惧を増幅させている。
マネーの流れだけではなく、モノの流れに異変が生じると、事態はより深刻となる。
よく中国株はローカルな市場ゆえ、国際的連鎖の可能性は低いと言われる。しかし、中国を出入りするモノの流れが大きく変動すれば、連鎖は不可避だ。
更に重要なことは、この中国株急落が、習政権の支配体制への不満感を国民の間で増幅させる可能性があることだ。北京指導部が最も嫌う社会不安へ発展するリスクだ。
中国国内で株式投資家はまだ少数派だ。しかし、株急落で全財産を失った人たちが「国により放置される」事例が、近所でも散見されるようになると、政権の指導力に対する疑心暗鬼は波状的に拡散する可能性がある。国家が株式損失の嘆きを言論弾圧しようにも、モグラたたきの如く、後を絶たない状況になるかもしれない。
しかも、相場の場合には、売り圧力の噴出を必死に食い止めている状況で、堤の一角が崩れると、制御不能となるリスクは高い。
マクロ経済的に見れば、株式損失による負の資産効果は限定的だ。
しかし、今回は、中国経済が輸出主導型から内需主導型への構造的転換を目指す時期での株安だけに、タイミングが悪い。
更に、タイミングといえば、国営企業・地方政府のかかえる膨大な債務を株式・債券にスワップするという構造改革が始まったばかり。大手術ゆえ、変革の痛みをおさえる株高という麻酔が欲しいところだ。ところが、痛みどめどころか、株急落という合併症が手術中に起きてしまった。
マクロ的には、限定的といっても、大きな転換点では、思わぬショック効果を生むリスクをはらむ。
そもそも、中国指導部には、個人投資家の売りなど抑え込めるという過信があったのだろう。
筆者の経験だが、上海の取引所アドバイザリーをやっていたときのこと。党の報奨人事で天下ってきた上層部に、相場というものを説明してくれと依頼された。そこで、色々な資料を用い実例を紹介しつつ、「売り手が増えれば価格は下がる。」と語ったとき、最前列に陣取ったトップから「待った」がかかった。「それは違う!売らせなければよいではないか。」
「売れば下がる。」「売らせなければよい。」議論がまったくかみ合わず30分過ぎたので、そこの部分は棚上げして、次の話に移ったものだ。
ことほど左様に、上層部のマーケット感覚は希薄だ。
しかし、今回ばかりは、烏合の衆と化した個人投資家集団の売り圧力を持て余している。
売らせなければよい、という発想の限界を悟っていることと思うが、遅きに失した感は否めぬ。
強権政治を進める習政権にとっても、思わぬ落とし穴が上海にあった。
中国型資本主義の根源的矛盾が人民の目前で晒されている。
なお、中国株急落で、ファンドが、商品を売って、全体のパフォーマンスを維持していることが、金急落の一因でもある。更に、信用口座なので、追加マージンコールのため現金を捻出するため、金売却を強いられたケースも多い。但し、これらのテクニカル要因は一過性である。
さーて、昨日貼ったら大好評だった、にゃんこ、写真の続き。
テラスの左の隅にも猫ちゃんがいるのが分かるかな~~。
無味乾燥な相場を追っていると、にゃんちゃんに癒されるな。。