2015年11月11日
12月利上げ観測が強まり、外為市場では円安優勢。一時台頭した円高論も下火になっている。
とはいえ、10月雇用統計発表後、アルゴリズム売買の初期発動でいきなり123円台になって以来、円安の進行は止まっている。
やはり、潜在的円高要因が、ジワリ円安の流れにブレーキをかけているようにも見える。
その一つが経常収支の持続的所得収支大幅黒字傾向。
10日発表の2015年上期(4~9月)国際収支速報で、筆者が最も注目した項目は、企業の海外での稼ぎを示す第一次所得収支が10兆8342億円の黒字で、前年比18.1%増えていることだった。
全体の経常収支黒字額8兆6938億円の最大要因。しかも、アベノミクス円安の過程でも、ほぼ一貫して高水準で黒字増加傾向にある。インバウンドも健闘して旅行収支黒字幅は6085億円を記録したが、所得収支黒字とはケタが違う。所得収支は、企業が海外から受け取る利子や配当金。日本の対外資産残高は300兆円を超し、世界最大級の債権国である。日本が、成熟した債権国として、蓄えた対外資産からの収益に依存する「投資大国」となりつつあることが鮮明だ。しかも、貿易収支の赤字額は前年同期から5兆418億円減って、1兆2173億円。為替レートへの国際収支要因は、じわりボディーブロー的に効くので、まさに円安の進行を遅くする円高要因と言えよう。
次に、金融政策の非対称性、即ち、米引き締め前夜、日欧緩和継続の構造というドル高構造は変わらない。だが、米利上げが先行すると、日欧金融当局が追加緩和の切り札を温存しても、円・ユーロ安が進行してくれる。「日銀追加緩和に動かず」という円高要因が、ここでも円安の進行を緩やかにしている。ちなみに、12月追加緩和を強く示唆したドラギECB(欧州中央銀行)総裁が、10月米雇用統計のビッグサプライズを受けた12月米利上げ説急浮上により、どう動くか、も注目されている。
そして、潜在的円高要因で見逃せないのが「有事の円買い」。
ロシア旅客機シナイ半島墜落がイスラム国によるテロの可能性が強まり、シリアでのロシア軍空爆強化、あるいは陸軍投入さえ視野に入る。ロシア主導で進行していた多国間のシリア外交的解決の動きも、暫時棚上げになるかもしれない。米ロの軍事介入が強化されれば、欧州に押し寄せるシリア難民は益々増えるリスクもある。
そこに、ロシアの陸上競技国家的ドーピング疑惑が飛び出した。ロシア側は、証拠を要求して、強く反論している。孤立化するロシアを象徴する出来事だ。プーチンの次の一手は、地政学的リスクをはらむ。
2016年まで見通せば、2015年のギリシャの如く、シリアと南沙諸島が、リスクオフ要因となりそうだ。
更に、ドル高、中国発世界経済減速による国際商品下落も、加速すると市場不安要因と化す。10日には、銅・プラチナがリーマンショックを挟む時期以来の水準まで下落した。ディーゼル車の排ガス清浄化触媒に使われるプラチナは、900ドルの大台を割り込み、金より200ドル近くも安くなるという異常現象が生じている。プラチナカードのステータスも、いよいよゴールドカードより下になるかもしれない。
なお、リスクオフによる円高は一過性なので、円安トレンドを変えることはない。
ただし、アルゴリズム取引により、短期価格変動は激しくなる。
8月24日に起こった、数時間で約5円の円高で116円台。その後の、急速な戻し。続々勃発する新たな地政学的要因により、この「円高の落とし穴」現象は今後も頻発しそうだ。
総じて、125円を目指す展開なれど、その円安のスピードは、「ゆるやか」となりそうだ。イエレンFRB議長が、利上げのペースは「ゆるやか」と明言していることとも呼応する。
そして、2016年に向け、116円程度の「円高の落とし穴」は想定しておくべきだろう。
さて、国内に目を転じると、アベノミクス2.0の一億総活躍論。
誰がつけたのか。エージェンシーなのか。とにかく気持ちもセンスも悪い言葉。女性活用、介護などの主旨には同意するが、もうちょっと気のきいたスローガンなかったのかね。ガイジンに説明するのにも、どうやって翻訳したものか。そもそも、アベノミクス2.0は、三本の矢ではなくて、三本の的といわれる如く、目標を掲げただけ。それを賄う財源は、どうするの?そういう都合の悪い議論は後回し。やっぱり、アベノミクス失敗に備えた資産運用は必要性を増しているよ。
ところで、話は変わるけど、最近、「仕事が忙しい」という状況が昔と変わってきた。メールやLINEが多いので、電話がうるさく鳴り続けるわけでもない。講演とか原稿書きとかテレビ出演とかは、すぐに終わる。しかし、そのために、常に最新情報を集め、頭の中を整理しておくことが、一番大変で、時間がかかり最も忙しい。然し、第三者が仮に私の行動を見ていても、考え中のときは、散歩してみたり、横になってみたり、5~6本同時進行など、頭の中はウニ状態でパニックになっていても、仕事で忙しいようには見えない。ただ、目が血走って、ボンヤリしているように見えるだけ。でも、ひっきりなしに仕事メールや仕事LINEは送られてくる。電話と違って、音はしない。せいぜい、受信の時に、軽くポーンとか鳴るだけ。ネットは職場環境を激変させたね。独立してから、仕事とプライベートの境があいまいになって、これは、まずいと思ってる。山の中、スキー・ゴルフ場にまで、ネットは追いかけてくるから。来年こそ、WLBワーク・ライフ・バランスを考えたいもの。
今日の写真は、最近のお気に入り。今更、珍しいものでもないけど、
ほうじ茶のkitkat
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そして、庭にタワワになった柚子。香りがいい。