2015年8月26日
引け前1時間前(現地時間午後3時)に、突如NY株価が下がり始めた。
「またプログラム・トレードの仕業か。」
時間を計ったような下降線には、機械的な動きが感じられる。
「昨日の下げより今日の下げのほうが、きつい。」
ウォール街から聞こえてくる呟きだ。
中国追加緩和発表を熱烈歓迎したNY市場は、寄り付き直後から急騰。午後3時まではダウ平均前日比で300ドル以上を維持していた。多くの市場関係者が安堵モードに浸っていた。
それだけに、最後の1時間の下げで、204ドル安に終わったことが、前日にも勝るショックなのだ。
結局、中国追加緩和の賞味期限は9時間で切れ、世界株安連鎖を断ち切ることは出来なかった。
昨日の日本株も午前中は反騰したが、午後になって急速に値を消した。ぬか喜びさせる市場のほうが意地悪なものだ。
こう見てくると、現在進行中の世界株安連鎖の正体は、実は、市場関係者の心の中にあるといえよう。
市場に対しては疑心暗鬼になり、当局に対しては信頼感を失いつつある。世界的緩和政策で育ってきた相場が、逆回転を始めた今、危機管理のための有効な政策対応が見えないからだ。
中国の追加緩和はマクロ経済の底上げを狙った政策だが、それが直接的な株価支援対策として有効か、となると別問題だ。
米国の場合には、既にゼロ金利状態ゆえ、利下げという伝統的手段が採れない。そこで、利上げ延期、更に、危機的状況になれば、量的緩和復活(QE4)の可能性さえ取りざたされる。少なくとも、今週になって、先週まではほぼ論外とされた、利上げ2016年に先送り説が急速に台頭してきたことは事実だ。
FRBの中央銀行としての政策目標は、物価安定・成長維持のデュアル・マンデート(二つの目標)とされるが、ここにきて、金融システム安定化への対応という第三の目標が問われることになった。
おりから8月29日には恒例のジャクソンホール中央銀行シンポジウムが開催され、各国の中央銀行幹部が集う。FRBからはイエレン議長が欠席だが、FRB内で金融システム安定についてのまとめ役であるフィッシャー副議長が講演する予定だ。
しかし、市場は今週末のアカデミックな議論まで待てない。
日米欧中の同時追加緩和という夢のような話が議論されれば、負の連鎖を断ち切ることが出来るだろうが、それぞれ国内事情をかかえる諸国が政策協調路線で合意することはやさしくない。議論している間に、相場は一人歩きを続ける。
25日、日本株と米国株で、ぬか喜びの心の痛手を被った市場のセンチメント(ムード)をいかにして修復するか。
市場不信を癒すには時間がかかりそうだ。
金もリスクオフで売られてきた。
リスク資産から総引き揚げ状態である。
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