豊島逸夫の手帖

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円120円台の真相と見通し

2015年2月12日


ギリシャ危機再燃、米国によるウクライナ・ISISへの軍事供与及び強化と地政学的リスクの顕在化にもかかわらず円は「逃避通貨」として買われず、逆に売られて大台攻防を演じた。

第一次ギリシャ危機と今回を比較すると、その理由が浮かびあがる。

前回なくて今回ある最大の要因。

それが、欧州中央銀行による量的緩和決定、そして、米国では量的緩和終了・利上げ視野という金融政策の大転換だ。


11日の欧州市場では、ギリシャ国債と他の南欧諸国国債の利回り変動に顕著な差が見られた。

ギリシャ10年債は0.3%以上上昇して10.5%台。3年債に至っては20%前後の水準まで急騰した。

しかし、スペイン国債、イタリア国債ともに0.02-0.03%程度の上げで1.6-1.7%台にとどまっている。

市場はギリシャのユーロ離脱の可能性を懸念するが、その危機の伝染が他の南欧諸国に及ぶ可能性は限定的と見ている。

その最大の理由が、ECBによるギリシャ以外の南欧債購入への期待、そして、伝染を防ぐための欧州金融安定化資金などの安全網整備だ。

更に、ギリシャ救済にロシア・中国が動く可能性をチプラス政権がちらつかせていることも無視できない。東地中海の地政学的要衝バルカン半島の最南部がユーロ圏から離れるような事態は、米国にとっても憂慮すべき事態となる。要は、欧米にはギリシャのユーロ離脱をおいそれと放置できない理由があるのだ。

そこで、ギリシャ債務危機に関しては、米国あるいはユンケル欧州委員長の調停で最悪の事態は回避されるとの読みが市場の底流としてジワリ効いている。

とはいえ、市場外ではギリシャのユーロ離脱観測は根強く残る。


次の2012年との相違点は米利上げ観測。1月米雇用統計の予想を大幅に上回る好結果により、いよいよ「利上げ、王手!」の感触が強まった。

米国10年債も一時は1.6%台にまで下がったが、11日は1.8%台にまで戻している。

日米金利差要因でのドル買い・円売りが、ギリシャ発「有事の円買い」を凌駕するかのような地合いだ。

外為市場内部要因としては、ECB量的緩和・ギリシャ危機を先取りして下げ続けたユーロに、そろそろ一服感が出て来た。

しかし、米利上げ観測によるドル買いの流れは変わらず。

となると、反対取引の売りの矛先は円に向きがちな市場環境だ。

ヘッジファンドも、1月はユーロ、2月は円と、年初から大筋の流れを読んでいた。

テクニカル面を見れば、三角持合いを「円安」方向に抜けた直後でもある。


今後の展開だが、ギリシャの資金繰りも今月いっぱいで「打つ手なし」の事態に発展する可能性を残す。瀬戸際政策が繰り返される過程では、円が逃避通貨として買われる局面もあろう。

しかし、持続性の観点からは、米利上げ要因のほうが、ボディーブロー的にジワリ効くことは間違いない。

ヘッジファンドのドル円相場参入により、日々の振れは高まろうが、趨勢は円安方向に戻り、120円を固めた後、122円を試す動きとなりそうだ。


ワイルドカードは原油。

11日はWTI先物が再び50ドルを割り込んだ。

シティーが発表した20ドル予測などをテコにトレンドフォローのヘッジファンド(CTAなど)が、再び大規模な売り攻勢を仕掛けてくると、原油急落→市場不安、株安→円高のシナリオも考えられる。

とはいえ、俯瞰してみれば、潮目は円高から円安へ変わったようだ。


今日の写真は、アテネで食した蛸のオリーブ焼き。シンプルだけど、新鮮な蛸でおいしい。そして、ギリシャ名物のヨーグルト。これもシンプルにオリーブかけて、パンにつけて食べる。ヨーグルトも、水気切って、ムースみたいな食感。財政危機になっても、旬の素材の味は変わらない。贅沢しなければシンプルライフで生きてゆける。

ミシュランの星を追わなければね。


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2015年