豊島逸夫の手帖

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ギリシャ救済交渉、ロスタイム入り

2015年5月12日

今晩10時からのBSジャパン、日経プラス10にBNPパリバの中空さんと生出演します。ギリシャ問題について。2ヶ月前にも出た番組。

http://www.bs-j.co.jp/plus10/

さて、今日のブログのテーマは、やはりギリシャ問題。

「12日返済期限のIMFからの融資7億5千万ユーロの振込手続きを事務方に指示した。」アテネの地元紙によると、ユーロ圏財務相会合で、バルファキス財務相が、「これが当方の誠意。」と言わんばかりに語ったという。

地方自治体・公立病院・公立大学などの当座預金の一部をギリシャ中央銀行口座に預託させて、なんとかかき集めたカネだ。しかし、その余波で、小学校の清掃員など職員数が削減され、怒ったママたちが抗議デモに参加する一幕も。

かろうじてIMFへの返済遅延は回避されたが、救済団(EU、IMF、ECB)からの融資再開は見送られた。現行の救済融資資金の未使用残高が使えなければ、ほぼ毎月来るIMFへの返済や公務員給与・年金支払いの見通しが立たない。更に、7~8月に来る大量の国債償還を賄うには、新たな救済スキームが必要になる。6月末までの7週間で、現行救済スキームからの融資再開と新たな救済スキーム交渉開始そして合意が、果たして出来るのか。参加国とくにドイツ国会の承認を得るだけでも時間がかかるは必定だ。

地元紙の見出しは、「救済交渉、ロスタイム入り」。それでも決着がつかねば、「延長戦」。

この試合は、ギリシャ側がデフォルト宣言すれば、とりあえずゲームオーバー。但し、次には、「ユーロ離脱」を巡る新たなゲームが始まる。

振り返れば、同じメディアが、第二次救済合意のときには「粘り勝ち」と書いていた。

借金も、身の丈をはるかに超える額まで膨張すると、借りた方は「どうせ返せぬ。」と開き直りがちなもの。そこで、困るのは、むしろ貸した側である。特にメルケル首相は、最近の地方選挙で敗北して、「ギリシャ許すまじ。」の批判を持て余している。そこで、モスクワまでおもむき、得意のロシア語を駆使して、プーチン大統領とウクライナ情勢について対話した。独国民の関心をギリシャから、歴史的経済関係の深いロシアに向ける意図が透ける。

救済団(トロイカ)も、ギリシャ経済の見通しについては、誤算の連続であった。

2010年の時点では、ギリシャ経済が2012年までには成長軌道に復帰と予測。それが、2014年後半にやっとプラス成長達成、と思いきや、2015年は再びマイナス成長転落の見通しとなった。

失業率も2012年には15%程度まで下落するはずが、逆に20%台後半まで上昇している。

公的債務のGDP比も、2012年の債務削減を経て2014年には、140%前後まで下がるはずが、おおむね170%程度の水準まで上がってしまった。

民営化・国有資産売却による歳入増も、2015年までに500億ユーロ調達の目標に対して、実績は30億ユーロ程度にとどまる。

足元では、EUの2015年ギリシャ経済成長率見通しが、2.5%から0.5%まで引き下げられた。

IMFはプライマリーバランスを黒字から赤字に下方修正して、ギリシャ債務削減が必要と説く。しかし、EUは、依然、黒字予測を変えず、債務削減は回避の方針だ。

対するギリシャ側も、チプラス首相率いる急進左派連合の内部分裂が顕在化している。部分的緊縮受け入れやむなしとの現実的妥協を唱える意見が台頭しているからだ。しかし、そもそも緊縮拒否路線で政権の座についたチプラス氏が容易に受け入れられる話ではない。

国内政局混迷、救済交渉難航の中で、国民の忍耐も切れかかっている。アテネで会った人たちのフェイスブックを見ても「いったい、どうなっているのか、どうなるか、さっぱり分からない」などの書き込みが目立つ。

世論調査票に書き込むときは、あらたまって「ユーロ離脱反対」とするが、ワインの勢いでつい本音がでるときは「ユーロ離脱やむなし」と語ったりする。極度の困難に直面すると、人間は非合理的な行動に走る場合もある。そこに、もし、自ら決められないチプラス首相がユーロ離脱の判断を国民投票にゆだねると、世論調査とは異なる結果が出るリスクがある。

どうみても、少なくとも今夏まではギリシャ債務問題がジワリ市場の頭を押さえる材料となり、早晩、ユーロ離脱の可否を決めざるを得ない状況となりそうだ。

・子供連れでピクニック中、インタビューに熱くチプラス支持を語るワーママ。

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・デフレの影響をもろに受け、売り上げ3~4割減は当たり前というアテネ市民の台所の市場。

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・アテネ証券取引所。銀行株のボラティリティーが激しく仕手株化している。上向き曲線をかたどった壁面の飾り物が虚しい。

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・チプラス首相就任100日超えで、100日戦争終結か、と伝える最新の地元紙。上昇する債務曲線から飛び降りる若者の彫刻は、急増する自殺者を悼んで制作されアテネ郊外に展示されている。

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・もうギリシャに飽きた人は、我が家のバラ全開写真でもみてちょうだい(笑)。

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2015年