2015年7月22日
本欄では、欧米投資家の日本株買いは長期的に継続すると、一貫して主張してきた。
ところが、今回ばかりは、彼らが躊躇している様子だ。
その背景を問い詰めてみると、「トシバ」「アベ」の単語が相次いで出る。
まず、不正会計問題に揺れる東芝の事例が「氷山の一角」ではないのか、と疑心暗鬼になっている。「ゾンビー企業」を経済非効率性の象徴のごとく嫌うので、「コーポレート・ガバナンス・コード」などで、日本の伝統的企業体質まで果たして変えられるのか、と問われる。筆者も、いささか返答に窮することもある。
そして、安保法制論議に安倍政権支持率低下。
日本株投資の大きな前提は、「安定政権基盤」による株価上昇の持続性にあった。その前提が揺らいでいる。
特に、今回、日本株投資に慎重姿勢を見せているのが長期運用の年金だ。
いっぽう、ヘッジファンドは、外為市場を戦場にドル買い・円売りに動き始めている。目標は127円前後。こちらは、素直に、9月利上げを前提にポートフォリオを構築している。イエレン議会証言で、「お墨付き」をもらったかの如き振る舞いだ。日本株買いも、短期決戦と割り切って、機会を伺っている。ジワリ上がり続ける相場は、彼らにとって、旨みがない。政治的要因などで乱高下したときが出番と割り切っている。とにかくボラティリティーありきの姿勢は変わらない。
総じて、今回の日本株上昇局面では、外国人投資家出動の場面がさほど見られなかった。グローバルな視点でも、ギリシャ・中国株を警戒したリスク回避が顕著だった。その二大リスクが後退とされるが、現場の感覚では、まだギリシャ総選挙の可能性・中国官製相場の限界などが意識されている。
日本株市場も当面、外国人投資家抜きでどこまで上がるか。日本人投資家のリスク耐性が試されている。
昨日、この原稿の英語版がメディアに流れてから、海外からの問い合わせが急増中だ。↓
なお、暴落した金価格は、1100ドル割れの水準で推移している。
割安感から、国内では、個人の買いが急増中。
当然の動きだね。納得できる。
それから、日経マネー最新号の連載コラム「豊島逸夫の世界経済深層真理」では、「来たるセプテンバーリスクに備えよ」と題して書いた。
最後に、金暴落で気になる今後の金価格について緊急セミナーを8月1日に福岡で開催します。主催、西日本新聞社。詳細は豊島逸夫事務所HPにて。www.toshimajibu.org