豊島逸夫の手帖

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円高異変の実相、120円試すか

2015年12月10日


いよいよ12月FOMCまで、あと1週間となった9日のNY外為市場で異変が起きた。円買いが加速。アジア市場時間帯には123円前後で推移していた円相場が、一時は121円ギリギリの水準となったのだ。
米利上げという円安要因は陳腐化した。
そこに、原油40ドル割れという鮮度の高い材料が勃発。世界的に株価の重しとなり、市場の不安感が急速に醸成され、マネーは逃避通貨=円に流れた。

この市場のセンチメント(雰囲気)を察知したNYのヘッジファンドなどが、日本時間で日付けが変わる深夜12時過ぎから、明らかに抵抗線突破を狙った円買いの仕掛けに出た。グラフで見れば、ほぼ垂直に122円40銭台から121円80銭台まで円高が急進。更に追い打ちをかける如く、日本時間10日朝3時過ぎから第二波の円買い攻勢。121円80銭台から一気に121円08銭近辺まで円高が進行した。高頻度取引なくして、このような短時間に一方的かつ急激な相場変動はまずあり得ない。それも、取引の薄い時間帯ではなく、NY時間前場午場真っ只中に生じているので、相当のロット(取引量)であったことが容易に想像できる。何事かとNYに電話入れてみれば、スイープに近い状態だったようだ。場に出ている円売り注文を箒で掃く(スイープ)ごとく、全買いでさらってゆく、というイメージで使われる相場用語だ。ただ、世界の外為市場で、ドル円はドル・ユーロに次ぐ取引量を持つ通貨ペアなので、スイープするには、巨額の資金力が必要になる。「鯨」は大手ヘッジファンドか政府系ファンドか、などと取り沙汰されていた。


とにかく、パワーゲームで抵抗線をブレークしてしまえば、そこに新たなレンジが既成事実として出来てしまう。
今日のアジア時間帯でいったんは小康状態に入るとしても、次は120円の大台が視野に入る。
深読みすれば、ECBに比し、周遅れ気味の日銀追加緩和姿勢に業を煮やした投機筋が損切り覚悟で円売りポジション買戻しに動いた様相も垣間見える。
先週のECB追加緩和は、量的上乗せなしで、失望感が目立ったが、プロの眼で見ると、ユーロをECB追加緩和観測の「噂で売って、ニュースで買う」という常套手段も透けた。そして、来週のFOMCで利上げが「ニュース」になれば、「噂」でドルを買い円を売ってきた投機筋が一斉に巻き戻しに走る可能性もある。そこまで読んで、ライバルより早く動こうとする先制攻撃だったのかもしれない。
現場では、海千山千の欧米トレーダーが、かくのごとく心理戦を演じているのだ。
なお、短期円高といっても、中長期の円安トレンドが変わったわけではない。
リスクオフの円高に持続性はない。


そして、今日の写真は、虎屋の「葛切り」。

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久しぶりにミッドタウンの虎屋で打ち合わせ。
注文してから作る出来立てホンモノの葛切りと抹茶で一服。
なお、葛って、こんにゃくみたいにローカロリー食のイメージが強いが、実は、しっかりカロリーあるんだよ。

お気をつけ(笑)。

2015年