豊島逸夫の手帖

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中国サプライズ利下げ

2015年3月2日


週末に思わぬ追い風が中国から吹いてきた。中国人民銀行によるサプライズ利下げである。今回の利下げは、前回同様に中小企業向けなどターゲット型ではなく、対象は広範の業種にわたる。前回の結果を見ると、利下げの恩恵を受けたのは既に債務過多の大型国営企業に限定され、更に、余剰マネーが株式市場に流入して、中国株が連騰した。肝心の不動産市場や一般企業まで利下げ効果が浸透したのか甚だ疑問である。個人や中小企業は、結局シャドーバンクに頼らざるを得ない。影の銀行の金利水準に中国人民銀行の利下げ効果は波及しにくい。それでも、あえて全人代直前に抜き打ち的な再利下げに踏み切らざるを得なかったところに、中国経済がかかえるジレンマが透ける。


マクロ的には明らかに供給過剰でストック調整中だ。そこで、経済成長を多少犠牲にしても公害などの経済の質を優先させる基本方針なのだが、成長が減速すると、深センなどで工場閉鎖・大量解雇などの失業を生み、社会不安が増大する。これは北京の党長老たちが最も嫌うシナリオだ。そこで、中国人民銀行には利下げの圧力をかける。

同銀行は優秀なテクノクラート集団だが、中国に中央銀行の独立性はない。

更に、中国の消費者物価上昇率は1月に0.8%にまで急落した。供給過剰、需要不足のデフレ懸念を象徴する経済統計だ。

金利低下とともに、マネー流出リスクも顕在化している。外為市場では、先週末、人民元の対ドル相場が6.27に接近。2年4か月ぶりの水準にまで低下した。制限値幅の下限(ストップ安水準)寸前にある。

それでも、世界的通貨安競争の中では、人民元安誘導で、輸出産業の下支えを優先させねばならない。

総じて、マクロ経済的には、中国経済のハードランディングが依然懸念されるが、市場は当面の緩和効果を歓迎する。追加緩和への期待感もある。


金は1220ドル台。プラチナは1190ドル台。

為替は120円接近なので、円建ては高い。

ドル高で海外金高の組み合わせは珍しい。

ダブルで円建て金価格は上がっている。

2015年