豊島逸夫の手帖

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米国の「クジラ」、利上げ波乱に備え資産組み換えへ

2015年9月3日

「世界的市場波乱に備え、運用資産の12%を米国債、ヘッジファンドなどにシフトする。」

米国の年金業界で、運用規模第二位のカルスターズ(カリフォルニア州教職員退職年金基金)の、この新戦略が話題になっている。

筆者は、第一位のカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)のCEOを9年間務めたジェームス・バートン氏の元で6年ほど働いた。その時に構築した米年金関連人的ネットワークから、昨晩、メールが入り、米国メディアでも報道されているという。

おりから、9月2~3日に開催されている同年金ボード・ミーティングで討議中のようだ。

横並び意識の強い米年金業界において、この資産入れ替えの影響は、少なくない。特に、米年金業界のオピニオン・リーダー的な存在として、CIO(運用最高責任者)アイルマン氏は、メディアにもしばしば登場する。2013年CIO誌で、世界で最もパワフルなCIO第3位に選ばれたほどの人物だ。

本欄でも2014年11月19日付けで「米二位の公的年金、日本株買いへ動く」と伝えたことがある

「日本経済は再出発を始めた。日本株は潜在性を持つ投資対象だ。」とも述べていた。

気になるのは、約22兆円にものぼる総資産の12%を入れ替えるにあたって、どの保有株式が売られるか、ということだ。同年金公式サイトで公開されている、7月31日時点でのポートフォリオ構成を見ると、58%がグローバル株式となっている。更に、カルスターズの運用基本理念は「長期に忍耐強く、潜在的キャピタルゲインをリーズナブルな価格で購入」と明記されている。

果たして、アイルマンCIOが明言しているTOPIXを忍耐強く持ち続けるのか。

本欄7月22日付け「東芝不適切会計処理、海外でも注目」に記したことだが、一般的にここにきて、長期運用の米年金は、日本株投資に慎重姿勢を見せている。

足元では、CTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)と呼ばれる、超短期売買専門のヘッジファンドが、日経平均先物の場で空中戦を繰りひろげ、日中に値動きを荒くしていることばかりが目立つ。

しかし、日本株にとって重要なことは、長期マネーの動きのほうだ。

8月第四週の外国人売り越しが7070億円と記録的な数字が発表されたが、米年金による日本株売りの可能性も考えられよう。

2015年