豊島逸夫の手帖

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原油下げ局面に底打ちの兆し

2015年12月15日

14日のWTI原油先物価格は、期近もので一時34.53ドルまで急落後、36.70ドルまで反騰した。投機筋空売り買戻しの典型的パターンだが、一つ異変が生じている。

16年1月限の期近は前日比65セント上昇して36.27ドルをつけているのに対し、17年1月限は68セント下落して44.27ドルとなったのだ。(日本時間15日早朝、時間外取引ベース)。足元では、さすがに底打ち感を感じる投機筋が増えているが、かといって、今後上昇しても、16年は40ドル台半ば程度にとどまるという相場観が透けて見える。実際、NY先物取引所フロアーの連中も、総弱気で膨れ上がった空売りポジションに、そろそろ気味悪さを感じ始めている。狭い出口に一斉に殺到する「劇場のシンドローム現象」には巻き込まれたくない、との思いだろう。

フロアーでの売買は、心理戦かつ肉弾戦だ。筆者は、仲間たちから、NY商品先物取引所で、その肉弾戦を身を持って体験した唯一の日本人と言われている。フロアーに配属され、最初の仕事は、「ランナー」と呼ばれる「使い走り」業務だった。フロアーでは、接触しても相手を傷つけないために、スニーカー着用がルール。タックルされ、文字通り吹っ飛んだこともあった。貧弱な体格の日本人には絶対的に不利。とにかく埃っぽいので、慢性鼻炎が「労災適用」みたいな世界だ。学歴なども一切関係ない。例外的に、ハーバード卒だが、親の遺産を元手に、自己勘定でリスクテーカーとして売買している人物もいた。スペキュレーター(投機家)という職業には誇りを持っている。知り合った同僚の家に招かれたとき、子供たちの授業参観で、親の職業を聞かれ、胸を張って「スペキュレーター」と答えたという。「春に種をまいて、秋に収穫する農家が、春の時点で、出荷価格を決めておくことが出来れば、生活が安定するだろう。でも、農家のヘッジ売りに対して、誰かがリスクとって買い手に廻らねば、売買は成立しない。そこで、ヘッジャーに対してスペキュレーターの存在が必要になる。我々は、農家の生活安定に寄与しているのだ。」これが、そもそも商品先物の原点であり、だからこそ、穀倉地帯の真ん中にあるシカゴが発祥の地となった。ところが、今は、マネーゲームの対象としてのスペキュレーション(投機)ばかりが幅をきかせている。特にコンピューター・プログラムによるアルゴリズム・高頻度売買の出現は、フロアーの景色を激変させた。

皮肉なことは、OPECが価格調整役を放棄したことで、原油価格形成における投機家の存在感が飛躍的に高まったことだ。100ドル台から30ドル台まで空売り・買戻しを繰り返して、連戦連勝。笑いがとまらない。今年は、充分儲けさせてもらったから、もう打ち止めにして、早々とクリスマス休暇に入る、という声が聞こえてくる。我々が原油価格を押し下げたから、消費者も原油安の臨時ボーナスの恩恵に預かれるのだ、といわれると、複雑な気持ちになる。クリスマス休暇には、家族そろって、円安の日本に来るという知り合いもいるので、リクエストされた「お好み焼き」を囲み、ジックリ16年原油価格について議論しようと思っている。

昨晩は、証券業界の大御所と会食。

曰く「豊島さんが忙しそうにしてる時には、株も金も買わない。ヒマそうになったら、買う!」さすが、相場のツボを心得ておられる。脱帽。家族ぐるみのお付き合いだけど、和やかな雰囲気で、真面目な経済の話できるのがいい。

経済とか投資って、専門家はプライドが強くて、やたらライバル視して、肩に力入れるけど、そういうのに限って、考えに考え抜いて結局外すのだよね。気楽に行こうね!

NYMEXフロアーで後輩と。

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ご近所の奥様から手作りクリスマスケーキの差し入れ♪

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益々、腕をあげておられる。深夜帰宅してから、我慢できず、ムシャムシャ(笑)。

明後日から寒波襲来らしいねぇ~~。

雪つもるかなぁ。。。。

2015年