2015年9月4日
海千山千の欧米ヘッジファンドも、現在進行中の世界的マネー波乱の波をもろに受け、巨額の損失を出していることが、ヘッジファンド顧客へのレターなどで、続々明らかになっている。
例えば、著名投資家デビッド・アインホーン氏率いる大手ヘッジファンドのグリーンライト・キャピタルは、8月だけで運用資産の5%を失った。1~8月で見ると、運用成績はマイナス14%。惨憺たる結果だが、それでも、顧客は2%のフィーを払わねばならない。まさに、踏んだり蹴ったり。解約が相次ぐのも当然だ。
その他にも、著名投資家ビル・アクマン氏率いるパーシング・スクエアが8月には9.2%の損失。これで、1~8月期ベースでは、トントン、即ち、損得ゼロになってしまった。
「物言う株主」としてソニー株取得、更に先月にはスズキ株取得で日本でも知られるサード・ポイントも、マイナス5.6%。
ヘッジファンド業界の大御所、ジョン・ポールソンも、8月初旬まではプラス20%の運用成績だったが、同月を終わってみれば、6%の損失を蒙る結果となった。
いずれも、中国株暴落、中国発世界株安連鎖を見誤った結果だ。
NY株が短時間でダウ平均1000ドルも暴落するような事態は、全くの想定外だったのだろう。
その結果、世界の機関投資家たちは、それぞれのポートフォリオのリスクを一斉に落とし、リスク回避モードに入った。リスクの量を減らすということは、保有株式の一部を売却することなので、市場の不安心理を更に悪化させる要因となった。まさに負の連鎖である。
直近では、中国市場が抗日70年行事で休場なので、小休止状態だ。
それにしても、中国市場の影響がウォール街に、そこまで及んでいることは驚きだ。
米利上げ決定要因としても、中国不安が、9月利上げ予定を12月まで延期させる材料として急浮上している。
そして、日本株は、8月の外国人投資家売り越し額が2.5兆円に達した。統計を見ると、外人の売りに日本勢がオールジャパンで買い向かった構図が鮮明だ。日本の個人投資家と年金マネー、両者とも買いを入れ、日経平均を何とか18000円台に引き戻した格好だ。18000円を割ると、アベノミクスが危うい、との危機感が感じられる。まさに、オールジャパンで死守したという様相である。なにやら、上海株を中国ナショナルチームと呼ばれた官民協調路線で買い支えたことを想起させる。
いよいよ9月16、17日のFOMCまでカウントダウンに入った。
まずは今晩の雇用統計。そして、中国市場が来週は再開。果たして利上げはあるのか。12月まで先送りか。正念場にさしかかってきた。
なお、金については、今日の日経朝刊商品面に、最近の中国金事情が詳しく書かれた記事が載っている。世界最大の金消費地に価格決定の場が、ロンドンから上海に移るという未来図は、可能性充分にあると思う。今後の金価格も新興国主導で上昇すると予想する所以だ。