2015年1月28日
「ギリシャがEUを離脱すれば、ギリシャからの食糧輸入禁止は解除するかもしれない」
1月16日ベルリンで開催された「ギリシャ製品見本市」を訪れたニコライ・フィヨドロフ・ロシア農相の発言をタス通信が報じた。
更に、複数英国メディアによれば、ロシアのギリシャ大使マズロフ氏が、26日に早速チプラス新首相を訪問。ギリシャとEU・IMFとの交渉が決裂すれば、ロシアが支援するか、との記者質問に、「それは交渉次第」と答えた。
また、昨年9月には、急進左派連合(SYRIZA)の外交スポークスマンが欧米のロシア制裁を「新植民地主義の過食症」と揶揄している。
本欄26日付けに「ギリシャ急進左派勝利にほくそえむ中国」と書いたが、ロシアもバルカン半島最南部という地政学的要衝の情勢を戦略的に重視していることがうかがえる。
ロシアの南下政策が、クリミア半島からギリシャまで視野に入れているであろうことは想像に難くない。
そもそも、ギリシャはギリシャ正教。ロシアはロシア正教と宗教的に「身内」関係にあるうえ、二国に挟まれたトルコとは犬猿の仲が続いている。
また、キプロス島は、ギリシャ系とトルコ系に南北分断されているが、国際的に承認されているギリシャ系のキプロス共和国が、ロシアマネーの租税回避地となっていることが、キプロス危機のときにあらわになった。ロシア系の住民も多い。
そのキプロス沖に原油天然ガスの存在が確認され、ロシア第二の天然ガス生産会社ノバテクが興味を示している。
この海域を巡っては、ギリシャ・キプロス共和国・イスラエルが排他的経済地域を宣言しており、トルコが反発している。
このような状況下で、万が一、ギリシャがユーロ離脱となれば、反動でロシアに接近するかもしれない。
中国は、いわば「ステルス戦略」でギリシャの港湾設備・運営会社や国際空港の利権を買い漁っているが、ロシアは、ギリシャ大使がプーチン大統領の祝賀親書を手渡すほど、EUを公然とけん制している。
ギリシャ総選挙と時を同じくして、(偶然とはいえ)停戦協定が締結されているウクライナの東部で政府軍と親ロシア派の武装対立が再燃した。
バルカン半島の地政学的リスクが高まりつつある。
金価格にも、いずれ影響を与える事態になるかもしれない。
なお、2月2日に京都で「どうなる?原油安とギリシャに揺れる市場」と題して講演↓
http://www.tse.or.jp/learning/seminar/etf/nomura_kyoto_150202.html