豊島逸夫の手帖

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上海株の大魚を逃したか、習主席

2015年6月12日

今日は仙台。
そろそろ、声が枯れて、選挙運動後の政治家みたいな声になってきたよ(笑)。 どこへゆくにも、自家製花梨はちみつジュースが必須。喉に効く。仙台に行くモチベーションは、ひとえに、牛タンだね~~。
お仕事関係の皆さん、メールたまってレス遅れているけど、週末に体制を立て直します!

さて、今日の本題。
中国の現政権の立場から見れば、バブル状態の上海株上昇は悩ましい。人民日報の報道を見ても、基本的に、株価上昇は経済にプラスとの見解で、個人投資家の株購入を正当化してきた。しかし、さすがに、足元の急騰局面では、「株式にもリスクがある。」という慎重な論調に変わってきた。
本音は秩序ある株価上昇が望ましい。現在進めている地方政府・国営企業改革にしても、株価が下落するような市場環境では進めにくいことはたしかだ。かといって、「烏合の衆」のごとき初心者個人投資家が、スマホの株投資ゲーム・アプリで「練習」した後、いきなり、信用取引で株売買を始めるという実態は、極めて脆弱である。

そこで、制度的に、株価インデックスで運用するパッシブな欧米機関投資家のマネーのような、質の高いおカネが流入できる環境を作ることが喫緊の課題となりつつある。
いっぽう、欧米機関投資家の立場からは、新興国株価指数の中に中国株特に人民元建てA株が組み入れられていないことが、国際リスク分散投資の執行を困難にしていた。
そこで、代表的指数算出会社のMSCIが、新興国株指数に中国A株を組み入れるという動きが顕在化した。
段階的導入プランだが、これが実現すれば、円換算で数兆円から最終的には数十兆円単位の良質な投資マネーがA株に流入することが期待される。(勿論、ヘッジファンドのような投機マネーも含まれる。)
そのMSCIの定期的指数見直しの発表が今週あったのだが、結果は、「条件付き」で採用を前向きに検討する、という内容であった。
次回の指数見直しが2017年6月なので、実質、先送り。中国当局は、おあずけを喰った感は否めない。
中国人個人投資家が主役で、しかも信用取引比率が7割前後。株を担保に証券会社が資金を融通するシステムなので、証券会社が相次いで増資に走り、その調達資金を投資家に廻している。このバブル的構造は当面変わりそうにない。

なお、MSCIが、今回指数組み入れを見送った理由は三つ指摘される。

1) A株への外国人機関投資家の運用額が「割り当て」により規制されている。その割り当てをどの機関投資家に、いくら配分するか、その判断根拠が不透明である。
2) 上海証券取引所と香港証券取引所の相互乗り入れが始まったのだが、様々な規制がかかっており、市場の流動性が充分に供給されるシステムとは言い難い。特に、パッシブ運用を開始すると、運用側は、一定量を定期的に購入する必要があるので、そのときに、売り手が足りなくては困る。
3) 上海・香港の相互乗り入れで購入された株式の所有権がどちらに帰属するのか、不透明な点が残る。

以上の3条件が満たされれば、MSCIとしても、組み入れ決定にやぶさかではない、とのスタンスだ。
要は、中国政府の規制緩和に向けての本気度が試されている。
市場では、中国政府は、今回、大魚を釣り損ねたが、いずれ、MSCIも指数組み入れに踏み切るとの見方が大勢だ。
とはいえ、足元では、当局の失望感も指摘されている。
当の、中国人個人投資家たちの多くは、新興国株指数などの要因が理解できているとも思えず、「失望売り殺到」のごとき現象は生じていない。
いっぽう、欧米機関投資家のほうからは、高値の中国株を今買わせられることが回避できた、と歓迎の声さえ聞かれる。
更に、もし中国株がまともに算入されると、最終的には新興国株指数における中国株の組み入れ比率が40%を超えてしまうことに懸念が残る。「日本を除くアジア株指数」と同様に「中国を除く新興国株指数」が必要になるかもしれない。

このように各論では問題山積なれど、いずれ中国株組み入れの方向性は変わるまい。中国人民銀行にとっても、人民元の国際化に向けて、貿易決済だけでなく資本取引での使用比率を高めることが必須の条件だ。
その一環として、中国人民銀行は、9月末のIMF世銀総会で、SDRにドル・ユーロ・円・ポンドに加え第5の国際通貨として人民元を組み入れる議論がなされることを期待している。
そのためにも、株式市場の更なる開放を含めた、全面的金融規制緩和の行程表を提示す必要があろう。
そして、タイミング的には、IMF総会前に、新興国株指数組み入れという「お墨付き」を得たかったことは想像できる。
いずれ、また釣れるとはいえ、今回は釣り逃した魚は、やはり小さくはない。

さて、英語の勉強したい読者のための最新英文原稿はこちら。

http://asia.nikkei.com/Viewpoints/Perspectives/Where-are-Shanghai-stocks-on-the-scale-of-pessimism-to-euphoria

そして、今日の写真は、私の法善寺横丁3点セット、というか、3店はしご♪
「こいさんが、はよう立派なトレーダーになりや、ゆうて、ながーいこと、水掛不動はんにお願いしてくれはりましたなぁ。。。」なんていっても、若い人は分からんやろね(笑)。

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2015年