2015年3月13日
NY株が下落しても日本株が上がると、「日本株・米国株のデカプリング(非連動)」が語られる。NY株が上昇すれば、素直に好材料とされ日本株も上がる。
都合の良い解釈だが、要は相場が上を試しにゆくときにしばしば見られる現象だ。
プロの間では、「マクロ経済データが上に下に振れるとき、市場トレンドを決めるのはポジションだ。」といわれる。
例えば、12日のNY市場では、寄り付き後20分程度でいきなりダウ平均が200ドル近く上昇する「ロケット発射」となった。そのキッカケは米小売り統計悪化。通常であれば株式には悪材料だが、FOMCを来週に控える市場環境のなかでは、「これでは利上げ6月は無理。」との観測が台頭。利上げ警戒感が和らぎ、好材料とされた。
市場が「悪いニュースは良いニュース。」との解釈を選択した背景には、投機筋の米国株空売りポジション蓄積が指摘される。FOMC前に、売りポジションは買戻し、スクエアにして(チャラにして)おきたい、との投機マネーの本音が透ける。
これが、「ポジション次第」とされる一つの例だ。
では、日本株のポジションは、どうなのか。
欧米の短期マネーも長期マネーも、今回の日経平均19000超えには、殆ど乗れていない。つまり、買いポジションは少ない。そこで買い遅れ感も出始めている。
ただし、彼らの株式運用のコアはやはり米国株と欧州株だ。日本株の優先順位はまだ低い。新興国株と同じ範疇で扱う機関投資家もいる。従って、「しまった。出遅れた。」というほどの切迫感は感じられない。日経平均19000突破で、節目の利益確定の売りが出て下がれば買う、というほどの認識である。19000を超えた水準から、新規の買いを本格的に入れるほど入れ込んではいない。従って、海外マネーの日本株買いも、現状ではあくまで、相場の下支え役とみるべきであろう。「ミスター・アベが、第三の矢の結果をデモンストレートして(明示して)くれれば、アベノミクス・パーティーに参加する。」という意味のコメントがしばしば聞かれるが、それが本音だろう。
海外マネー依存型になりがちな日本株市場だが、日経平均19000から20000への道は、当面、日本人の買いにかかっている。そこでは、日本側の企業業績と日銀の追加緩和が決め手となろう。
現時点での海外マネーの役割は、臆病な日本人投資家に下値安心感を与えることといえそうだ。
かくして、株が上がると、投資家も心に余裕が出来て、金のような新たな投資媒体を考える余裕も生まれる。株が下がると、金どころではない、という感じになる。これが、投資家の本音だろう。
株を利食って、金を買う、という流れは、良い連鎖だと思う。
かたや過熱感の漂う株。かたや売られて下がった金。
買われ過ぎのものは売り、売られ過ぎのものは買う。これがポートフォリオのリバランスということだ。
朝日新聞デジタルに金対談掲載中。
↓のLIVINGのところ。
http://www.asahi.com/and_M/
公式HP
www.toshimajibu.org
も順調に立ち上げ。
以下は今日の日経電子版メルマガより。
【編集部から】
ダウ平均が300ドル以上下げた11日の朝、「金のつぶやき」の豊島逸夫さんは慌てず騒がずの風情で、短期勢の動きで相場が下げたところを年金基金など海外の長期資金が拾うシナリオを指摘していました。記事のタイムスタンプは8時44分。
その日の日経平均株価はご存じのとおり市場関係者も驚いた底堅さで、一時は150円以上上昇。長期資金の買いという解説もあり、まさに豊島さんの書いたまま。こう言っては失礼ながら、いつにも増して「見えている」ムードが漂っています。
豊島さんは週末に、旧知の投資家仲間に呼ばれてNYに行くそうで、ウォールストリートのインサイドの空気を吸ってこられます。豊島さんがNYに呼ばれるのは相場が動くときが多く、あちらからのリポートが楽しみです。
(マネー編集長 深田武志)
そして、今日の写真は蛸!
鮨屋で茹でたて。旨かった!