OPEC総会、ドル高そしてエルニーニョ現象の共振現象により、原油先物価格下落が加速。これまで下値圏とされた40ドル台を大きく下回り7日のWTIは37ドル台で引けた。
先週ウィーンで開催されたOPEC総会では、声明に総生産量の数字が明示されない異常事態となり、増産に歯止めがかからない実態を印象付けた。
一方、米利上げ視野に外為市場ではドル高基調。ドル建てで売買される国際商品には、重しとなる。
そして、暖冬予報が暖房用需要伸び悩みを連想させる。
この原油安は、マクロ経済的には「減税」に似た効果があり、個人消費にはプラスとなるが、それも程度問題。100ドル以上だった価格が30ドル台まで急落すれば、エネルギー関連企業の経営根幹を揺さぶり、リスクの負の連鎖が市場全体に及ぶ。株価もとばっちりで下がる。
問題は、このまま原油価格は下がり続けるのか。ゴールドマンサックスは20ドル台を予測して話題となっているが、200ドル台予測で外した「実績」もある。
ここで、プロの眼は、原油先物市場における現先スプレッドに注目する。
7日のCMEにおける限月ごとの先物価格を見ると、期近(2016年1月もの)は約2ドル30セント急落して37.60ドル台だが、2017年1月ものの下げは約1ドル50セントにとどまり、46ドル20セント台。更に、2017年12月になると、70セント強の下げで50.10ドル台、2018年12月で50セント強の下げで53.20ドル台となっている。
原油のように保管コストがかさむ商品は、先物価格のほうが現物価格より高いコンタンゴといわれる状況が普通。それにしても、足元では、コンタンゴ拡大が目立つ。ちなみに、1か月前には、期近と一年後の先物の値差が6ドル程度だった。それが今や8ドルを超す。
足元では需給が明らかにだぶついているが、先高観は根強いと読める。
とはいえ、ここまで現先スプレッドが開くと、現物価格で原油を買い込み、一年後の先物価格で売っておけば、一年間保管コストを払っても、充分に儲かる計算も成り立つ。しかし、実態は、原油保管施設はどこも満杯で、スーパータンカーを保管場所に使うほど。その結果、現先スプレッド縮小せず、とも読める。
かくして、原油価格は足元で弱いが、下げの持続性となると、読みは割れる。
そこにつけいるのが投機筋だ。
OPECの価格調整能力が崩れたという事実は、原油価格が先物投機家の手に委ねられたことを意味する。
そもそも100ドル台から30ドル台への急落など、先物投機マネーなくしては、まずあり得ない現象だ。
その原油先物市場では、大きな構造変化が起こり、一部の投機家が価格をほんろうする事態となっている。
キッカケは「原油という庶民生活に影響を与えるモノの価格が投機マネーで乱高下している。」との批判であった。そこで、NYの商品先物市場を席巻していた大手投資銀行トレーディング部門の投機的売買に規制をかけるドッド・フランク法が成立。ところが、その結果として市場の流動性が急減して、ボラティリティーが逆に大きくなってしまったのだ。
しかも、残ったヘッジファンドなどの投機家たちは、高頻度取引を駆使して、意図的に価格をゆさぶる。
先週から今週にかけても、一部のヘッジファンドは、ユーロ売りをやりすぎて大損を出した模様だ。ECB追加緩和に期待しすぎたためである。その直後に開催されたOPEC総会で、恰好の原油売り材料が出たので、失地挽回のため、原油先物売り攻勢に拍車がかかった。
ここで注目すべきは、これら投機筋はいかに世界的原油在庫が膨張とはいえ、個々に原油現物は保有していないこと。受け渡し期日までには、現物を手当てするか、先物売り契約を買い戻さねばならない。ロールオーバー(いったん買い手仕舞い、同時に新たな先物契約に乗り換える)も考えられるが永遠に繰り返すわけにはゆかない。つまり、どこかで臨界点に達し、先物の買戻しが起きるは必定。今年も一時原油価格が50ドル台に戻した事例があった。今回も再び40ドル台を回復する場面があろう。但し、そこを絶好の売り場とみる投機筋も出てくるだろう。40ドル回復の後、再び30ドル台に下落。しかし、30ドル台の低価格持続となると確証は持てないので、さすがに一年後受け渡しの先物で売りはかけにくい。
原油安の株価への影響も、今がピークだろう。原油なしの生活など考えられない。現状は、原油30ドル台への急落にともなうリスクを織り込んだ段階といえる。
金プラチナは連れ安。原油市場の引力強し。
さて、今日発売の週刊朝日。
ワイド特集↓
* 上空3000メートルにも届く!中国製市販レーザーは"兵器級"
* 金、プラチナが「底値圏」 2020年に1グラム=7000円?
* 大丈夫か財務省? 国債の海外売り込みに全力
あ、元ワールドゴールドカウンシルの代表がプラチナ薦めてる、って思う人は業界人。一般個人にとって、金もプラチナも貴金属。ライバル関係などというイメージはない。業界の常識、世間の非常識!独立した今は、貴金属関連の仕事より国際経済全体の話のほうが増えたし、業界との付き合いも疎遠になったから、かえって客観的見方になったのではないかな。今年底値圏に下がるまでは、金弱気コメントばかり発していたしね。今は強気。
ところで、地方セミナーのエピソードで、なるほどと思った話。金現物には固定資産税がかからないと聞いて、田んぼ二つ売って金買ったという実話。固定資産税払っている人たちなら理解できるだろうね。
そして、地方のセミナーならではのセミナー終了後アンケート回答。「講師の、ため言葉がやたら気になった。」 真面目な人なんだろうね。でも、これが私のスタイルだからね。変わらないよ。そもそも客扱いしないしね。敬語で「語らせていただきます」調で聞きたいなら、よそに行きな(笑)。