2015年12月14日
先週金曜日のNY市場関係者の対話で最も頻繁に出た言葉は「サード・アベニュー」であった。マンハッタン3番街に本社をかまえる著名ヘッジファンド、サード・アベニュー・マネジメントが投資家向けレターで償還停止、ファンド清算を告げていたからだ。同ファンドはハイイールド債(低格付け債)に投資しているので、利上げの影響をもろに受けやすい。その背景には、自社株買い・M&Aなどのために、様々な格付けの民間企業が社債を通じて資金調達に走ったこと。その中には、原油急落の直撃を受けたエネルギー関連企業が多く含まれること。いっぽう、投資家はゼロ金利環境の中で、少しでも高いイールド(利回り)の追求に走ったこと。その過程で、ボルカールールにより、市場の潤滑油役を果たしていた大手投資銀行が、リスクの高い債券の売買の自己勘定売買から退出したことにより、市場の流動性が減少したことが挙げられる。
そして、追い打ちをかけるように、2件目のヘッジファンド破たんも11日に明らかになった。ストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズという、ディストレス債に投資するファンドが、「解約急増により」会員投資家への償還を停止したのだ。同ファンドは元ベアースターンズのファンドマネージャーにより運用されている。なお、ディストレス債とは、経営がかなり悪化している企業に高金利で投資資金を入れる債券である。
どちらの例も、ヘッジファンドの運用規模から見れば、市場を大きく揺るがすほど巨額ではないが、一時はハイリターンの魅力で注目度は高かった。それが、利上げをまたぎ、ヘッジファンドの連鎖的破たんを誘発しないのか。市場はリスクの連鎖に神経質になっている。
著名投資家カール・アイカーン氏は、ツイッタ―でハイイールド債市場の「メルトダウン」の可能性を指摘して、米CNBCとの電話インタビューでは、「ダイナマイトの樽」と表現した。特に市場の流動性が細っているリスクを重視して、ハイイールド債に投資するETFの売買が急減していることに言及している。
NY株式市場では、この要因が既に、原油急落と並ぶリスクとして意識され始めた。リスク回避の円高を加速させた原因ともなっている。今週、もし新たなヘッジファンド破たんのニュースが伝わると、119円台までの円急伸も視野に入る。11日もNY時間で円が急激に買われた。円買い本尊のNYの「鯨」は、清算などで円売りポジションをも手仕舞うヘッジファンドか、との観測も出ている。
総じて、今年のヘッジファンドの運用実績は夏の中国発世界連鎖株安により、かなり悪化している。そこに、新たな破たんのニュースが流れ、ただでさえ運用フィーが高いこともあり、投資家のヘッジファンド離れが続くは必至の情勢だ。
かくして原油安・利上げの悪影響の実例が飛び出すと、FOMCとしても無視できず、16年の利上げペースを2回程度に抑える可能性が高まることも考えられよう。
そして、昨日発売の日経ヴェリタス、豊島逸夫の逸's OK!では、「原油安で大儲けしたのは」と題する原稿。
それから12月25日BSジャパン、夜10時からの日経プラス10の後半30分で、生出演で2016年のリスク総ざらい話す予定。
そして、翌朝26日朝9時半から、大阪のABC朝日放送で3時間半の特番に出演。飛行機で伊丹空港からスタジオに滑り込み。
テレビ出演で、どうして、こう重なるんだろうね~~。
そして12月28日からは、欧米市場クリスマス明けで、利上げ後の市場が本格的に始まる。なんて、すっかり利上げ前提に書いてるけど、「上がり坂、下がり坂、そして、まさか」もあるからね。。。クワバラ、クワバラ。。。