豊島逸夫の手帖

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金・株・円の6月サプライズとは

2015年4月14日

米利上げ9月以降が主流となった今、金融市場の最大のサプライズは「利上げ6月前倒し」であろう。マーケットは、利上げの執行猶予が延長されたと読み、すっかり流動性相場モードに入っている。しかし、ちゃぶ台返しのリスクは厳然として存在する。利上げ最終決定は「マクロ経済データ次第」との姿勢は一貫して変わらないからだ。経済指標が持続的好転を見せれば、一転6月利上げも辞さず、との構えである。

そこで、目先注目されるのが、今夜発表の米小売売上高だ。

消費は、米GDPの約7割を占める「本丸」である。

それが、2014年12月前月比0.9%減。2015年1月0.8%減。2月は市場予想0.3%前後増に対して0.6%減と冴えない数字が続いている。

その理由として必ず挙げられるのが、冬季悪天候だ。

NY連銀ダドリー総裁は、4月6日の講演で、「当方の分析によれば、積雪量とその影響を受けた人口数の計測値は、5年平均を20~25%上回る。」ので「一過性現象」と結論づけている。

一方で、構造要因もある。

米中間層の将来への見通しは決して楽観的ではない。

住宅市場では、住宅ローン金利は史上最低圏なのに「マイホーム購入」より「賃借り」で様子を見る傾向が顕著だ。

原油安の「実質減税効果」で浮いたおカネも、消費されず、貯蓄に回っている。

だからこそ、クリントン民主党次期大統領候補も、草の根作戦で、「中間層の復活」をまず訴求している。

このような経済環境下で、3月小売り売上高が、事前予想どおり1%前後のプラスに転じれば、「利上げ6月前倒し」サプライズの導火線となりうる。

前述のダドリー氏は、「長期的な視点では利上げは長く病んだ米国経済の退院。祝い事なのだ。」と強調する。

しかし、短期運用のヘッジファンドにとって、マイナス金利の時代にドルの調達資金コストが0.25%上昇することは、直ちにパフォーマンスの足かせとなる。

長期運用の年金にとっても、安全資産へ一時逃避するときには、マネーのパーキング料を払わねばならない状況だ。足元では、独国債10年物まで利回りマイナスが視野に入っている。

超低金利時代における0.1%の違いはずっしり重い。

だからこそ、2015年利上げは最大のリスクなのだ。

なお、今、ウオール街で最も読まれるブログがバーナンキ氏のブログ。4月13日更新分では、「金利はなぜ低いのか」と題し、世界的低金利現象について論じている。日欧緩和、原油安などを要因として挙げつつ、最後は、理由特定できず、「パズル」だと締めくくっている。

後任のイエレン氏には、エコノミスト論争に参加する余裕はなかろう。エコノミストには最も苦手な「決断」をせねばならぬ。

イエレン氏に、先述の「パズル」が解けるとも思えず、不安要因をかかえたままの最終決定となろう。

やはり、米利上げは2015年最大の市場要因である。

さて、豊島事務所、副代表治部れんげが、私と共同執筆で始めた新連載コラム「25歳のあなたへ」に、下記の原稿書きました。

第五回「結婚して家を買おうと思ったら、マンションのモデルルームより「保育課」へ行こう」

第六回「20代後半女性の転職は「産んでも働ける会社」選びが重要!

http://news.mynavi.jp/money/gold/

2015年