2015年7月9日
筆者が、中国で取引所・商業銀行のアドバイザリーを引き受けていたときのこと。幹部向けセミナーで、トレーディングの仕組みを説明していた。金について「生産者が売れば、価格は下がる。」と当たり前のことを話しているときに、待ったがかかった。最前列に陣取った理事長が「それは違う!売らせなければよい!」と反論してきたのだ。「売れば価格が下がる。」「売らせなければよい。」話が全くかみあわない。堂々巡りが続くだけなので、ついに、その箇所は暫時棚上げして、次の話に移った。ちなみに、その理事長は、共産党への貢献度が認められての報奨人事による天下り組であった。
そのような体験があるので、今回の株式売買規制の中に「上場企業で保有株式5%以上の株主には、今後6か月売りを禁じる。」との措置に接したとき、「変わらない人たちだ。」と思った。
いっぽう、中国人民銀行主催の銀行幹部向け「ゴールド教育セミナー」で講演したときのこと。質疑応答に入ったところ、100名ほどの参加者が一斉に手を挙げた。そこで最初に指名した人からの質問は、単刀直入に「金って儲かりますか?」
そのとき、ステージの横にいた人民銀行の担当者が動き、なにやら質問者を制している様子。通訳に聞けば「銀行幹部としてお行儀が悪い。」とたしなめているとのことだった。それに対し、質問者は真っ赤な顔でステージ下まで詰め寄り、なにやら甲高い声でまくしたてている。再び通訳に聞くと「人民銀行の規制が多すぎる。」と不満をぶちまけていたのだ。日本の銀行界では考えられない光景なので印象に残っている。ちなみに人民銀行の担当者は30代とおぼしき女性。セミナー開場前に、隅でお化粧を直している姿は普通のOL風なので、名刺交換して、人民銀行シニア―・FX・トレーダーの肩書と知ったときは少々驚いたものだ。聞けば、飛行機が満席で、夜行列車で北京から上海に来たので、肌の荒れが少々気になっていたらしい。
それにしても、銀行幹部からの最初の質問が「儲かりますか?」ときたところに、中国人投資家の実態を見た思いがした。
彼らの熱気にじかに接したのが、上海での個人投資家向けセミナーでの講演。400人の参加者で開始時の会場内には異様なムンムン感が漂う。ここでも、セミナー後の様子が印象に残っている。初対面の投資家どうしが、「株は上がる。」「いや下がる。」と侃々諤々議論を始めたのだ。その勢いはつかみかからんばかり。通訳が「あの人たち、初心者だけれど、明日にも証券会社で信用口座を開設するのでは」と笑いながら説明してくれた。そして、今回の上海株急落が日本のテレビでも報道され、街頭で個人投資家どうしが、つかみかからんばかりに議論している光景を見ると、やはり「変わらない人たちだ。」と思った。
なお、質疑応答で「日本円」動向に関する質問が多かった。将来的な円建て投資のポテンシャルを肌で感じたものだ。
不動産、理財商品、金、株。。。値動きの良さそうなセクターを求め、投資マネーが国内で回遊している。
そのような投資ニーズに応えるため、アドバイザリーをやっていた商業銀行の郊外支店内には、「交易体験区」と銘打ち、先物トレーディングの体験コーナーがあった。
そこで、顧客と話してみると、例えば相場が急騰すれば、日本人なら高値警戒感でやや引きがちだが、中国人は「ここまで上がったのなら、もっと上がる。」と考える傾向が興味深かった。ゆえに、今回のような株式バブル崩壊に巻き込まれ損しても、めげず懲りず、新たな投資で捲土重来を期す人たちも多い。リスク耐性が、日本人より強いように感じた。
かと思えば、旧知の30代独身男性は、将来の結婚に備えコツコツ蓄えていたが、不動産価格が安定しないので、とりあえずのつもりで株式投資に蓄えを回し、暴落で半分以上財産を減らした、と嘆く例もある。
このような体験を経てきたので、中国の株式市場については、荒っぽい政府の介入の中で、荒っぽい個人投資家が投機的売買を繰り返す構造が当面変わりそうにないと感じている。
中国人投資家気質だけは、習主席も、持て余しているようだ。
1.中国人民銀行主催の銀行向け外為教育セミナーでの質疑応答風景
2.商業銀行郊外支店内の先物取引体験コーナー
3.上海での個人投資家向けセミナー会場
さて、円建て金価格が円高・海外金安で安い。為替と国際金価格のダブルで安くなるときは、あまりない。割安感あり。引き続き、1200ドル以上で弱気、1150ドルで強気。プラチナも充分に安い。
日経平均も19000台になって安い。念のため、直近でメディアに流れた私の予測見直したら、7月18000。円は120から125に円安方向なれど、ところどころに、円高の落とし穴あり。(日経CNBC、金融闘論)。
フーム、18000までは下げない感じ。そろそろ日経平均も底値っぽいね。ドル円は見方変わらず。