豊島逸夫の手帖

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米利上げ決定、マーケット転換点に

2015年12月17日

「やっと=finally利上げ決めましたね。」

記者団から、こう切り出されたときの、イエレン議長が示した安堵の表情が印象的だった。ゼロ金利という非伝統的金融政策を有事対応として強いられた中央銀行家が、オーソドックスな金利政策というツールを取り戻したことが実感できたやりとりであった。

いっぽう、イエレン議長が、珍しく、数回口ごもる場面もあった。

「インフレ率2%達成に強い自信を持てなければ、2回目の利上げはないのか。」と問われたときだ。

インフレ率がxx%になれば、再利上げに踏み切るというような、シンプルな公式はない、という答えだった。

インフレ率を引き下げている要因としての原油価格急落については、素直に「サプライズ」と答え、「価格安定化」が最も重要としている。

少なくとも、原油安が「一時的」との見方に対する明確な見解は聞かれなかった。

ドル高に関しては、そのリスクは残る、と肯定。これも、物価下落要因である。

中央銀行の二つの政策目標(デュアル・マンデート)といわれる「完全雇用と価格安定」に関しては、前者には自信を示したが、後者の自信に明確な裏付けは感じられなかった。

総じて、市場の不安感に対しては、「大袈裟に反応するな」、つまり「大事ない」とする。将来、「相当の」経済ショックが起きる可能性はあることを認め、その時は、しかるべき金融政策の調整を図るスタンスを確認した。「国際情勢にも目配り」と述べたので、中国・新興国リスクなども考慮する姿勢だ。今、市場を騒がせているハイイールド債不安問題については、用意した原稿に目を通しつつ、「特殊な投資信託に関わる問題」として片づけた。

そして、注目のFOMC参加者による金利予測(ドット・チャート)だが、まず、今回の利上げ賛成15名、反対2名が明らかになった。

次に、16年の利上げ幅に関しては、前回(9月時点)では0.875%から2.375%の広いコア・レンジに割れていた。しかし、今回は0.875%から1.625%の狭いレンジに集中している。明らかに、予測金利水準は下がった。イエレン議長が繰り返し強調する「緩やかな利上げペース」が確認されたといえる。

市場の反応は、引き締めではなく、緩和政策の調整であるという見解により、緩和相場は続くということで安堵相場。特に、FRB保有債券の償還分は再投資する方針が明確にされたことを、緩和姿勢の継続と重視している。「利上げ見送り」というサプライズシナリオは回避されたことで「ヤレヤレ」との本音が聞かれる。ゼロ金利海域からの船出を静かに見守っているが、「出口戦略」という壮大な実験に対する不安は市場の底流に残る。

かくして、米国金融政策の転換点は歴史的転換点を迎えた。

日本への影響は、基本的には、良いと思う。

なんといっても、利上げは米国経済が利上げ出来るほどに回復した証しなのだから。ダドリーNY連銀総裁の言葉を借りれば「祝い事」だ。株式市場も、良い材料が出ると、利上げ近しとして、下げ材料と見るような、いびつな状態から脱するだろう。良いニュースは素直に買い材料として捉えるようになろう。あとは、実力勝負、即ち企業業績次第だ。流動性相場の後押しは継続されよう。

外為相場は、ドル高円安相場が成熟期に達したとの見方もあるが、やはり、米国と日欧中の金融政策の方向性の違いは鮮明ゆえ、まだドル高傾向に揺るぎはない。原油安・ハイイールド債不安などで、一時的に逃避マネーが円に流入する場面はときおり生じるだろう。

原油価格は、米利上げによるドル高が、再び下げ要因として頭をもたげつつある。

金プラチナ相場も転換点をむかえ急騰。

利上げのハードルをクリアした事実は重い。

底値圏から、いきなり脱出とはならないが、底値圏が確認された感が強い。

なお、利上げ・原油安について、初心者向け解説を19日土曜朝のABC朝日放送で行う。

朝9時半から。

そして、今日の写真は、まず、蝦蛄(しゃこ)。

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鯛メシ。お頭をほぐして、混ぜ、緑を入れる。

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2015年