2015年11月12日
「独身の日」に、アリババ集団は、なんと2兆円相当売り上げたという。
そこで、アドバイザリーを務めた中国の大手商業銀行や取引所に勤めた頃の知り合いに「独身の日」の意味を聞いたところ、二つの答えが返ってきた。
まず、結婚する前に「独身時代を謳歌する日」。
この意図が商業化され、ビッグイベントになった。
次に、独身時代に終止符を打ち、いよいよ婚姻登録する日。
確かに、婚姻登録所では長蛇の列が出来るという。
更に、独身にサヨナラしたくても出来ない人たちのために、上海市は、この時期に2011年から、「届婚恋博覧会」と銘打ち、いわゆる婚活イベントを開催してきた。背景には、一人っ子政策で、結婚願望はあるが独身の身に甘んじている男性が増えてきたという人口動態が指摘される。特に、女性胎児の中絶が増えた結果でもある。
第一回から、このイベントは、1万人を超える規模で開催され、知り合いの30代前半の若手行員も参加してきた。親同伴も目立つという。
男性間の競争が激しく、マイホーム購入が結婚の前提とされる。そこで、彼も、住宅購入のために貯金に励んできた。その資金を、結婚が決まるまでの期限付きで株で短期運用してきたが、御多分にもれず、上海株暴落局面で、かなり目減りしたと嘆く。性格は至って真面目なのだが、職場結婚も日本ほど一般化しておらず、未だに伴侶に恵まれていない。
「いまや独身の日といっても、アリババの株価を支える商業的手段」と、金融関係者らしいコメントで語る。友人たちもまとめ買いしているが、粗悪品を掴まされた例も珍しくないという。返品を要求しても、「粗悪品と認定される証拠書類を出せ。」と挙証責任を要求され、泣き寝入りのケースが多いようだ。
「二人っ子政策に転換といっても、現状の婚活男女比の偏りが直ちに解消されるわけではない。結婚して第二子まで許されても、中国経済がハードランディングすれば、それどころではないだろう。」とこれまた、経済知識のある銀行員は冷静に将来を見通している。独身の日セールといっても、ぜいたく消費は一部の勝ち組に限られ、普段から倹約して、この日に必要品を廉価でまとめ買いするという傾向が強い。マクロ的に消費拡大とは言いかねると、経済的評価も厳しい。銀行員ゆえ、国民の所得格差、企業の「デフレ・マインド」、不良債権の実態などを「知り過ぎて」いるのだろう。
独身の日特需は、将来の消費の先食い現象なのかもしれない。
更に、中国経済のデフレを象徴する出来事ともいえる。
10月卸売物価はマイナス5.9%。消費者物価上昇率も1.3%に留まる。一時は6%を超えてインフレ懸念と言われたが、さま変わりだ。モノの値段が上がらないと、企業の売上も増えず、生産を減らし、将来に向けての設備投資も控える。リストラも始まり、消費者の財布の紐も締まる。だから、独身の日のバーゲンセールに殺到する。住宅も売れず、在庫がたまるばかり。まさに、デフレの負の連鎖だ。
いっぽう、VWスキャンダルは泥沼化の様相。
独当局は、VW車以外のメーカー(固有名詞出さず)でも、排ガス不正の可能性に言及。現地報道では、BMW、フォード、フィアット・クライスラー傘下のアルファロメオ、ルノー、現代自動車、マツダの名前を挙げている。
欧州では、窒素酸化物だけではなく、二酸化炭素排出量についても不正が疑われている。異常気象に見舞われている欧州では、地球温暖化=二酸化炭素排出に特に神経質になっているのだ。
中国経済不安、ディーゼル車危機を映し、プラチナ価格は880ドル台にまで急落。リーマンショック時の安値に接近。安い!
いっぽう金価格は1080ドル台。これは米利上げで想定内。