豊島逸夫の手帖

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投機か、投資か、ミセス・ワタナベを試す郵政上場

2015年11月4日

欧米市場でジャパンのミセス・ワタナベといえば、「FX個人投機家」のことであった。

しかし、今回の郵政上場にあたっては、「株個人投資家」としてのミセス・ワタナベの動きが注目されている。

「貯蓄から投資へ」というより「投機から投資へ」の流れが顕在化するのか。

従来のミセス・ワタナベの行動から推せば、6日の米雇用統計の前に、はやばやと売り手仕舞ってしまうことが予想される。

今週のNY市場は、米雇用統計待ちの構えだ。特に、12月利上げの有無を決める最も重要なイベントゆえ、株式市場も神経質になっている。

その不透明感をかかえつつ、長期投資として、今回の超大型新規上場株を保有し続けるのか。ミセス・ワタナベの株式市場におけるリスク耐性が試される。

実態を見るに、「レバレッジ型ETF」の短期売買に慣れたミセス・ワタナベも多い。

「貯蓄から投機へ」ではなく、アベノミクスの目指す「貯蓄から投資へ」のマネー・シフトを加速するキッカケとなるのか。

この点は、海外投資家が日本株を評価するうえで、重要なポイントなのだ。日本人個人投資家の本格参入により、国内の流動性の厚みが増すことが期待されているからだ。

欧米ヘッジファンドに振り回され、「ウインブルドン現象」と揶揄される市場環境では、欧米年金などの「リアル・マネー」も躊躇してしまう。

まずは、6日の米雇用統計を挟む動きに注目したい。

それから、10月20日付け原稿再録

郵政株、いつ売るか?

前人気上々の日本郵政グループ新規上場。

セミナーで聞く個人投資家の声もさまざまだ。

高配当に魅力を感じて長期保有態勢のシニア層もいれば、短期勝負の「小遣い稼ぎ」を目論む肉食系投資家もかなり多いことが気になる。

筆者は、株式投資について、buy and forget 買ったら忘れろ、目先の材料に一喜一憂して、余計な売買しても、儲かるのは業者だけだ、と説く。

しかし、忘れられないのが人間の性。株を買えば日々の株価が気になる。かくいう筆者も、いまだに、「悟り」などひらけず、偉そうなことをいえない。トレーダーあがりの宿命であろうか。

郵政株についても、11月4日が上場日だが、その2日後の6日には、米雇用統計発表の洗礼を受けることになるのが気になる。

特に、9月雇用統計の予想外の悪化で、米利上げ先送りモードになっただけに、10月雇用統計の重要性がいつになく増している。

悪化が続けば、利上げ2016年に後ずれが決定的になり、「悪いニュースは良いニュース」として反応する現在の相場には、上げ材料になりそうだ。

逆に、好転すれば、いよいよ12月利上げ観測が強まり、株価の下押し要因となろう。

かりに、上場後の郵政株価がかなり上がっていれば、雇用統計前に売却するインセンティブが働く。

逆に、万が一、下がっていれば、個人投資家のリスク耐性が試される展開となる。

初心者投資家の参入が多いようなので、パニック的な売りも散見されるかもしれない。

米雇用統計を乗り越えた後も、11月はヘッジファンドの決算期だ。

特に今年はヘッジファンドが8~9月の世界同時株安のあおりをまともに受け、惨憺たる状況だ。決算期まで残り少ない状況で、一発逆転を狙うファンドが、日本人初心者投資家に揺さぶりをかけてくるケースも絵空事とはいえない。

そして、12月には、9月に続きFOMCでの利上げ決定の有無が今年最後のビッグイベントとなる。

なかなか、買って忘れられる地合いにはなりそうにない。

プロでも、最も難しいのが、利益確定売りなどの出口戦略。「もっと待っていれば良かった」「早く売っておけばよかった」。完全な解がないだけに、常に悔いが残るものだ。

最後は、己の欲との戦いである。

2015年