豊島逸夫の手帖

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「信じていいのか。」戸惑い動けぬ市場の本音


2015年2月18日


17日NY市場取引中に突然流れた「ギリシャ政府妥協説」。

原油価格はブレント60ドル台、WTI先物50ドル台回復定着の兆し。

米国10年債利回りは2.1%台まで上昇。

市場は戸惑っている。「本当に信じていいのか。」


ギリシャ楽観論については、具体名は明かさず、ブリュッセル・アテネの消息筋・高官発言として「今月末、期限切れとなる現行救済策の4~6ヶ月延長を要請。」との報道が複数流れた。この「ギリシャ、救済延長要請へ動く。」とのヘッドラインが株価を買い方向へ動かせた。

しかし、報道される妥協案を精査すると、結局、「ギリシャ側は構造改革を撤回しない。」との条件つきだ。

国民に痛みを課す構造改革撤回を公約している現政権が、選挙民を納得させられるのか。市場は「信じたいが、信じがたい。」心境だ。

そもそも、どうみても返済できるとは思えない借金を背負った国に、借金返済を迫るところに無理がある。

株は買われ、円は売られたが、いずれも「ギリシャ・ユーロ離脱」を想定した投機的株空売り・逃避的円買いポジションが巻き戻されたにすぎない。手仕舞いが一巡したあと、新規株買い、円売りがフォローするか否かは、むしろFOMC議事録などの米国側要因の出方次第だ。


原油価格上昇も同様。

膨れ上がった投機的原油売りポジションの一部が手仕舞われた。いわゆる「ショートカバーラリー」の域を出ない。フォローの新規買いが後に続くか、となると、さすがの先物投機筋も、直ぐには動けない。シェールオイル減産ひとつとっても、リグ(採掘装置)総稼働数は減っても、本当に良質の岩盤のリグは減らない。


そして、筆者が最も注目するのは、米国債利回り上昇。

今度こそ、米国経済本格回復を映す「良い金利上昇」の兆しなのか。

米国以外の世界中に蔓延するマイナス金利環境の中で、米国だけ利上げに動けるのか。結果としてのドル急騰に米国経済は耐えられるのか。

6月利上げを示唆するFRB地区連銀総裁発言が続いたが、果たして信じていいのか。


昨年の市場は「中央銀行には逆らうな。」との運用方針でそれなりのリターンを享受できた。しかし、今年の市場には「中央銀行サプライズへの警戒感。」が満ちている。スイス・ショックは市場心理にまだ鮮明に残っているのだ。発表3日前まで「対ユーロの上限維持は金融政策の大黒柱。」と語っていたスイス国立銀行が、あっさり、その大黒柱のはしごを外した。「財務相が減税公約を撤廃すれば大政治問題となるが、中央銀行が金融政策方針を変えても、中銀の独立性の原則により守られる。」公定歩合の上げ下げを聞かれても「中銀は嘘をついても許される。」と言われた時代もあった。しかし、いまや「市場とのコミュニケーション」が重視され、金融政策の道筋を明示する「フォワード・ガイダンス」が重要な政策ツールになっている。それでも、FOMC声明・議事録やイエレン発言の最後には「利上げ最終決定はマクロ経済データ次第。」との但し書きが必ずつく。

こうなると、ちゃぶ台返しの布石が打たれているので、市場もおいそれと動けないわけだ。

しかも、その米マクロ経済データは、雇用統計こそ量的質的改善を見せたが、GDPの7割を占める消費者の信頼感・小売り売上などは芳しくない。

このような市場環境で、高まるのはボラティリティーだけ。

多くのトレーダーが日計り売買(デイトレード)に徹し、宵越しのオーバーナイト・ポジションは持ちたがらないし、厳格化するリスク管理のもとでは、そもそも許されない。日々、市場間の瞬間的値差を狙うアービトラージ(裁定取引)ばかりがはばを効かせる。

2015年の市場は、特に地政学的要因にサプライズが多く、おそらく、このような相場つきが続くのではなかろうか。


金・プラチナは中国春節入りを捉え、先物市場で売りこまれた。金は1200ドルの大台ギリギリ。プラチナは1170ドル台。中国のジュエリー業者の金購入需要が春節とともに一段落して、在庫過多気味のところを、投機筋がついてきた。プラチナは、引き続き欧州経済不安がディーゼル車購入買い控えを連想させ売られている。プラチナは底値圏。


春節といえば、都内は中国人観光客だらけ。あかぬけない服装は大陸からと知れる。それしても、円安効果は凄い。スキー場も秋葉原も外国人の波。

2015年