2015年4月20日
ギリシャは、4月いっぱいは、公的年金積立金取り崩しなどの非常手段で、なんとか資金繰りを乗り越えられる。しかし、5月12日IMFに対する7億7百万ユーロ返済までには、国庫の現金が払底する。ただし、その前日5月11日に開催されるユーロ圏財務相会合で、ギリシャ側から、信頼に足る改革案が提示されれば、つなぎ融資によりデフォルト回避できる可能性を残す。従って、現状では5月11日がXデーといえる。
これが、筆者が今週後半フランクフルトとアテネで会う関係者たちの現在の意見を総合したうえでの、現状分析だ。
ギリシャへの「緊急流動性供与」は、話し合いで実現可能なのだが、「債務返済能力」(専門的にいうところのソルベンシー)については、ひとえにギリシャ側の本気度次第だ。
しかし、ギリシャ側から提出される改革案は、脱税撲滅のための税務当局の独立性を保証することなど、手を付けやすい方策が殆ど。「岩盤規制」ともいえる雇用改革、年金改革、民営化を崩すという決意は語られても、具体的案までには踏み込めていない。そもそも、国民に痛みを伴う政策を拒否することで選出された現政権だ。
そのギリシャの現左派連合政権は、緊縮部分受け入れ派から断固拒否派まで真っ二つに割れている。チプラス首相が、救済側へのリップサービスで「満足できる改革案を提示する。」と語っても、党内、更に、国民がついてこない。
筆者が最も懸念することが、第一次ギリシャ危機に比し、ギリシャ政権と救済側に、決裂寸前ともいえるほど不信感と感情的対立の溝が深まっていること。
たとえば、ECB理事会後の記者会見中に女性がドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁のところに乱入したが、その伏線があった。EU議会のドラギ証言中にギリシャ議員が野次を飛ばし、ドラギ氏が不快をあらわに、やり返す場面があった。前回のECB理事会後の記者会見でも、ギリシャ系メディアの質問に、憤懣やるかたないという語調で答える場面もあった。「これだけ譲歩して融資を続けてきたのに、まだ、それに答える改革案が提示されない。」ことへの不満が噴出したかのような場面であった。ショイブレ独財務相も、公の席で「ギリシャは小国。なにがあってもしょうがない。」という、ほぼ諦め見捨てたかのような趣旨のコメントをしている。ドイツ国民の世論調査でも、ギリシャのユーロ離脱賛成派がついに過半数を超えた。
更に、チプラス首相が、ロシア・カードをちらつかせていることも、EUの神経を逆なでしている。タス通信とのインタビューに、「西側のロシア経済制裁は、賢明とはいえず行く先のない道だ。新たな欧州安全保障構築にロシアを含むべきだ。」などと発言しているのだ。
ロシアへの経済制裁に拒否権発動を匂わせ、救済交渉の材料に使っているかのようだ。
ワシントンのG20に集まった各国首脳の間でもギリシャが話題となり、米ルー財務長官が、「有事の安全網が整備されたが、市場へ波乱要因には注意が必要。」と述べている。
なお、ギリシャがかりにデフォルトしても、直ちにユーロ離脱とはならない。
とはいえ、デフォルトすれば、銀行とりつけ、預金封鎖、資本移動規制、国境・空港一時閉鎖などの緊急措置が採られる可能性がある。
最後に、日本への影響だが、ギリシャ不安と、中国株式市場での空売り規制による波乱が共振すると、115円に向けた円高リスクをはらむ。米国経済のソフト・パッチ(ぬかるみ)と呼ばれるマクロ経済のぜい弱的な面が経済データで更に顕在化すれば、利上げ後ずれ予測台頭により、ドル安に振れやすい地合いとなる。米国株式もベビー・ベアー(小熊程度の弱気論)がジワリ拡散中だ。
日本のGW期間中は、東京市場休場で取引が薄い円相場が欧米時間帯で投機筋に狙われやすい。スマホ・マーケット情報から目が離せない休日になりそうだ。
いっぽう、金価格はギリシャ・中国不安を映し、1206ドル程度まで反騰している。ドル安傾向も金買い要因。
仮に、ギリシャデフォルトともなれば、1240ドル程度は考えられる。しかし、経済有事で買われる相場は一過性。年後半に米利上げを控えているので、まだ下げ波乱要因がある。年内は1150~1240ドルの展開と見る。
さて、昨日発売の日経ヴェリタス「逸's OK!」で、「7割で十分。欲張らない哲学」を書きました。
それから、今日発売の東洋経済誌57ページに写真インタビューが出ています。「マーケットの先を読む」という特集記事です。
今日の写真は、おなじみ洗足池マガーリの、桜マス・グリル。
池上線沿いの住宅街なので、リラックスした雰囲気でほっこりしたひとときを過ごした。
ちなみに、最近の日本の大企業では、社員が集まって会食など集団行動はなるべく控えめに、というコンプライアンス・モードで、集まるときは目立たない「山手線の外で」。いやはや、そこまで、気を使うかね。。。。