豊島逸夫の手帖

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2016年最大の地政学的リスクはシリア

2015年11月20日

中国については、昨日本欄「中国は対テロ国際協調に反発の兆し」と書いた。「西側が東側と対テロで協調を求めるのは、自らがテロの痛みを感じたときだけ。東側のウイグル自治区でのテロなどは、人権問題に関連づけられる。それはエゴイズムだ。」との現地論調を伝えた。くしくも、原稿が載った直後に、ISによる中国人人質殺害を中国外務省が認め、強く非難した。では、対IS共同戦線で、米英仏ロに中国も加わるのかといえば、それはなさそう。習近平主席も、G20そしてAPECの場で、あえて議論を避けるがごとく引っ込み気味に行動しているようだ。あくまで、一線を画すとみえる。

そして、イランが、パリ同時テロ後、微妙な立場にある。

これまでのシリア紛争の構図は、反アサドの米国・イスラム教スンニ派諸国などの有志連合と仏が、IS限定空爆。対して、アサドを支えるロシアとシーア派イランが、ISと反アサド勢力を攻撃という図式だった。

しかし、パリ同時テロとシナイ半島上空でのISによるロシア民間機爆破により、プーチンが有志連合と英仏側に接近。その結果、ロシアと依然強硬派のイランとの対シリア対応に温度差が生じているのだ。

更に、イランと敵対関係にあるサウジ・イスラエルが、ここぞとばかりにロシアに接近する可能性もある。

その結果、イランが孤立化すると、核協議最終合意も揺らぐかもしれない。イラン原油輸出本格再開の見通しが立たなくなると、原油価格には上げ材料となろう。そして、昨日の日銀総裁会見でも、原油価格見通しが50ドルか40ドルかとの議論があったが、金融政策にも影響必至だ。

とはいえ、ロシアがアサド抜きの次期シリア政権を条件としたシリア停戦協定に本当に合意できるのか。大きな疑問符もつく。

いっぽう、米国では、ISテロがNYを標的とするかの如きプロパガンダ動画が流したことで、NYPD(NY警察)が夜遅くに異例の記者会見。テロの脅威に切迫感が生じると、ヒラリー・クリントン民主党大統領候補への支持が高まりそう。国務長官経験者で「外交・安保の達人」と言われるからだ。早くも「シリアへの地上軍投入」を唱えている。

大統領候補者討論会でも、シリア難民の扱いを含め、テロ問題が争点として急浮上してきた。トランプ氏は「シリア難民はシリアに送り返せ。」と相変わらずの大衆迎合的発言を繰り返す。

2016年のシリア情勢は、欧州難民危機とISテロ問題に米大統領選もからみ、世界の株価・為替・商品への影響必至の様相だ。

さて、今日の写真。

1)内田恭子さんとの対談写真@朝日新聞。今月中に掲載される。

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2)週刊新潮今週号「臆病な素人投資家が3年後に笑うのはどっちだ?」 その中で、インバウンド3000万人なら、ドンキホーテ
vs高島屋の株のところと、ゴールド対プラチナのところでコメント。

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3)千疋屋のフルーツ杏仁豆腐。影がこんなに長くなってきた。もう冬近し。

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2015年